70歳「友川カズキ」インタビュー 「戦場のメリークリスマス」の出演を断った真相

エンタメ 芸能 2020年2月23日掲載

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シラフで歌ったことがない

――耳障りの良い言葉は口にしないが、友川の才能が放っておかれた時代はない。中上健次さんとはFM東京の番組で知り合った。中上さんがホスト役を務めていた『音楽ってなんだ』という番組に招かれたのだ。旧友の歌手・三上寛(69)と一緒だった。

友川「もともと中上さんの小説の大ファンで、凄い人だと思っていました。才気の質量がまるっきり違う」

――番組が終わると、3人で新宿ゴールデン街へ。たちまち親しくなる。その後、たびたび飲むようになった。

友川「うちのアパートに泊まりに来てくれたこともありましたね」

――下の世代にもファンはいる。2013年には大宮エリーさん(44)がホスト役を務める音楽番組「ARTIST」(TBS)に出演。一部で話題になった。

友川「あれ、ベロベロだったでしょ(笑)。スタジオのセットに酒が置いてあって、大宮さんと2人でガブ飲みしちゃって。反響? 別にないですよ。あっても気にしませんけど」

――同年の『ゴロウ・デラックス』(同)にも作家の西村賢太さん(52)と一緒に出た。西村さんとも以前から親交がある。

友川「西村さんの作品が好きでね。僭越ながら、彼の小説『暗渠の宿』(新潮文庫)の解説も書かせていただきました。芥川賞を獲る前からハマってて、ステージで西村さんの話ばかりしていたら、産経新聞から書評を頼まれた。それを読んでくれた西村さんから解説の依頼があったんです。芥川賞の授賞式にも呼んでいただいたのですが、私は最初、断ったんです。パーティーの類は苦手で、出ると誰かとケンカになってしまうから(笑)。でも西村さんが『俺、友達少ないから』と言ってくれたので、スタッフや知人を何人か誘い、出席させていただきました」

――ナインティナインの岡村隆史(49)もファンだ。20代、30代にも友川の歌の愛聴者は少なくない。

友川「ちょっとは届いているんだなぁ、という感覚ですかね」

――熱烈な競輪愛好家としても知られる。

友川「もともとギャンブルが好きでしたが、今はほとんど競輪。やり始めてから30年近いです。あらゆるギャンブルに精通した作家の色川武大(阿佐田哲也)さんが、『最後に辿り着いた最高級のギャンブルは競輪である』と書いていますが、その通りだと思います。色川さんと私とではレベルが違いますけれど」

――なぜ、競輪に魅了されるのか?

友川「競輪をやらない人に競輪の面白さを伝えるのは至難の業ですが、端的に言うと、競馬で勝負のカギを握るのは馬で、競艇はエンジン。オートレースもまたエンジンですよね。でも、競輪だけは人なんです。だから面白い。当然、選手にもいろいろな思惑があるので。個々人の性格や、選手間の関係性もありますしね。作家の伊集院静さんが『競輪は情報と記憶力と金と度胸』と書いていますが、その通りなんです。ただ、それらを総動員しても、当たるとは限らない」

――友川の言葉は歯に衣を着せぬものばかり。忖度は一切ない。物事に動じるということがないのではないか……。

友川「いや、動じっぱなしですよ。なにしろ、人前ではシラフで歌ったことがないですから。一度だけ、ライブの直前に腸閉塞になった時は一滴も飲まずに歌いましたけれど。そしたら、思いのほか声がよく出てね(笑)。それからは、リハ後の『前打ち上げ』で飲んでから歌い、ステージ本番では水だけ。それで、ステージの後に本当の『打ち上げ』を、気合いを入れてやっています」

――なぜ、シラフで歌えないかというと、友川のステージは観客との真剣勝負だからだろう。

友川「私も表現者の端くれですが、聴きに来てくれる人も表現者。何らかのリスクを背負い、私が歌う場にわざわざ足を運んでくれるのですから。それだけに、毎回緊張感があります」

――この2月で齢70を迎えたが、友川はまだまだエネルギッシュ。今後の抱負は?

友川「原発でも何でも、嫌なモノは嫌だと言い続けたい。幸いにして、それが言えるステージもある。新しいドキュメンタリー映画(『どこへ出しても恥かしい人』)が公開されたこともあって、最近はお客さんもいっぱい来てくれているんですよ。それも、ほとんどが若い人です。ライブでは、客席全体に向かって歌うのではなく、あくまで一人一人と対峙するつもりで歌っています。幸か不幸か長生きする家系のようなので、需要がある限り歌うつもりでいます。才能はないんだけど、体力だけはあるし、唾はいつでも吐けるから」

■映画情報
友川カズキ主演ドキュメンタリー映画「どこへ出しても恥かしい人」
新宿K’s cinema(東京)で2月28日まで公開中
http://www.ks-cinema.com/movie/dokohedashitemo/
3月7日~13日 シネマテーク(名古屋)
http://cineaste.jp/future/index.htm
4月3日 出町座(京都)
demachiza.com/
4月4日 シネ・ヌーヴォ(大阪)
cinenouveau.com/
近日〜 元町映画館(神戸)
https://www.motoei.com/
※上映時間等詳細は各劇場の公式サイトをご確認、またはお問い合わせください。

■ライブ情報
2月23日(日) 新宿レッドクロス(東京)
3月12日(木) 渋谷ラママ(東京)
3月25日(水) 学芸大学APIA40(東京)
4月3日(金)  Loft PlusOne West(大阪)

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
ライター、エディター。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

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