自宅での喫煙に“4500万円払え”裁判 「禁煙学会理事長」の医師法違反が明るみに

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 この4月から、「健康増進法の一部を改正する法律」が施行される。いよいよ屋内原則禁煙時代の到来だ。ならばせめて自宅ではゆっくり紫煙を燻(くゆ)らせたい。そんな喫煙者に、寛ぎの聖域でもたばこを吸うなと訴える訴訟が起こされていた。

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 神奈川県横浜市の郊外にある団地。その1階に、あるミュージシャンの男性が住んでいる。妻子も一緒だ。男性の商売柄、自宅の一室は窓と壁を二重にした防音室になっている。彼はそこで日に数本、たばこを吸っていた。「ガラム」や「コルツ」といった独特な匂いの代物だが、ベランダで吸ったり窓を開けっ放しにするわけでもない。

 ところが2017年11月、突如として被告となる。訴えてきたのは、斜め上に住む一家。70代の夫妻と40代の娘、3名だった。原告側曰く、男性の副流煙のせいで家族が受動喫煙症や化学物質過敏症に罹患したから、計約4500万円の損害賠償を支払え。自宅での喫煙の禁止も求める――。

 男性の妻がため息をつきながら振り返る。

「いったん訴訟を起こされると、それまでの平穏な暮らしが奪われてしまいます。うちから煙が洩れて受動喫煙を引き起こしている根拠などないのに、原告は、常にうちから原告宅方向へ風が吹いているなどと好き勝手に主張しました。それを否定するため気象庁からデータを取り寄せたり、家の前にリボンをつけて風向きを観察したり。必死に証拠集めをした。これは本当に大変でした」

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