新型コロナ、クルーズ船“全員下船”で新たな懸念 偽陰性が招くウイルス拡大

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 新型コロナウイルス“隔離”のため、横浜港に停泊しているクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号。14日間におよぶ待機を強いられた乗客たちの中には、環境の悪化を訴え厚労省に「要望書」を提出する者が現れるなど、船内には大きな混乱が起きていた。間もなく待機措置は解除となるが、これで一件落着とはいかないようだ。

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 ちなみに、このクルーズ乗客は船内以外でも、パニックを生んでいた。

 この船から脳梗塞の症状が出た米国籍の男性とその妻が、横浜市内の病院に救急搬送された。肺炎も併発していたため、こちらの検査もしたところ、8日、感染が確認されてしまったという。

「しかし、その病院は、『感染症病床』を持たない病院でした。そのため、“何科が診るんだ!?”“防護服がないぞ!”“ゴーグルもないけど、目からうつったらどうする!?”など、医師らの間で大混乱が起こったんです」(横浜市政関係者)

 この騒動、所詮、隔離された海の上のこと。対岸の火事、と見る向きもあるかもしれない。豪華クルーズの代金は、最大138万円、安値でも25万円。ネット上には、金持ちに罰が当たったなどという酷い声もあるくらいだ。

 が、現在の予定では、19日には「非感染者」も下船する。そこに重大な懸念があるという。

「そうなると、その方々がウイルスを撒いてしまう可能性があるのです」

 と言うのは、元厚労省医系技官の木村盛世医師。どういうことか。新型ウイルスの検出は、PCR検査と呼ばれる手法で行われている。

 感染症に詳しい、東京農工大学の水谷哲也教授によれば、

「まず被験者の咽頭や鼻から粘液を採取します。RNAをDNAに転写し、これをサーマルサイクラーという機器に入れ、回す過程で、増幅します。今回であれば、コロナウイルスのDNAの数が検出感度に達したらシグナルが出て、陽性と判断されます。ケースによっては6~7時間はかかるのです」

 本船の検査は、横浜検疫所が中心になって行う。が、そこでは1日で20件超しかキャパシティーがないというから3700人を検査するのは困難だ。そのため、検査は乗客全員に行われているのではなく、咳などの症状のある人と、その濃厚接触者に限られている。つまり、このクルーズ船における「非感染者」とは、検査を受けて陰性だった人だけでなく、そもそも症状が出ていないため、検査自体を受けていない人がほとんどなのだ。そして当然、

「症状が出なくても、ウイルスを保有している可能性はあります」(同)

 北大グループの調査では、今回のコロナウイルスの半分はそうした無症状のキャリアーから感染しているという結果も出ている。そして仮に3700人の全員検査を行えたとしても、まだ安心はできない。

「コロナウイルスのRNAが10個以上ないと、検出感度には到達しません。1個や2個の場合、保有はしていても『陰性』という結果になる。しかし、その後、これが体内で増えていく可能性はあるわけです」(同)

 いわゆる「偽陰性」である。すなわち、検査で「陰性」と言われた人が、実は「隠れ陽性」で、ウイルスを撒いてしまう可能性もあるというワケなのだ。

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