新型コロナ、チャーター便帰国者が語る恐怖の道中 検査拒否者の怒声に周囲は失笑

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 しかし着陸後、すぐに外へ出られたわけではなかった。機内で彼らは先に触れた検査誓約書とは異なる「別の誓約書」にサインさせられたのだ。それは、

「外務大臣宛てのもので、武漢―羽田の片道航空券代(8万円)を必ず支払う、もし支払いが遅延したら年利5分の利息を支払うという内容のものでした」(先の邦人ビジネスマン)

 日本は一体いつから金を払わないと助け出してもらえない国に堕(だ)したのか……。

 そんな「残酷な誓約書」に署名した後、チャーター機を降りて羽田空港の到着ロビーに向かうと、そこでも帰国者の疲労を増す騒動が繰り広げられた。206人のうち2人が、その後、新宿メディカルセンターに移動して受ける感染検査を拒否したのだ。

「ともに30代くらいの男性で、そのうちのひとりは政府の職員に向かって大声で怒鳴っていました」(同)

 この邦人ビジネスマンの耳をつんざいたのはこんな怒声だった。

「(検査を受けるか否かは)自由意志やろ!」

「帰れるやろが!」

「なんでなん!」

 到着ロビーに響き渡った関西弁の「大人の駄々」。

「周りのみんなが失笑していた。私自身も、同じ日本人として恥ずかしいと思いました」(邦人ビジネスマン)

 結局、この2人は検査拒否を貫き去っていった……。

 そして、第1便帰国者の多くが「隔離先」である勝浦ホテル三日月に到着したのは夜8時頃。武漢を発ってから実に半日超の長旅だった。ところが、疲労困憊でなんとか寝床に辿り着こうとしていた彼らに、さらなる仕打ちが待っていた。

「私たちに示されていたのは三つの選択肢でした。まず政府のバスで自宅の最寄り駅まで移動する。次に勤め先の社用車か自家用車で自宅に帰る。最後がホテルに滞在する。政府は三つの選択肢にばらけると予想していたものの、思いのほかホテル滞在希望者が多くなり、また政府の方針転換もあって、内閣官房の職員が私たちにホテルの部屋が足りなくなったと告げてきたんです。さすがに呆然としました。そして、相部屋でも構わない人は名乗り出てほしいと……。申し訳ないんですが、私は名乗り出られませんでした」(同)

 結局、夫婦や友人同士が相部屋可と申し出たため何とか事なきを得たが、新型肺炎のリスクが増す相部屋を自己責任で選択させるとは、まるで「感染ロシアン・ルーレット」ではないか。

週刊新潮 2020年2月13日号掲載

特集「官邸が蔓延させた『アベノウイルス』」

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