新型コロナ客船で珍事? 「ドローンでワインを配達してもらった」の真相は…

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 新型コロナウイルスに乗客が感染したのを受け、現在、豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」は横浜港沖に停泊中である。10日現在での感染者の数は136人。約3700人の乗員乗客は隔離下に置かれているわけだが、そんな折も折、「ある乗客がドローンでワインを届けてもらった」という驚きのニュースが、海の向こうで報じられたのだ。

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 件の記事は、オーストラリアのゴールドコースト・パームビーチから参加したという「デイブ・ビンスキン氏」のフェイスブック投稿を基にしたもので、英『デイリーメール』電子版に2月8日に掲載された。妻とともに乗船中というビンスキン氏は、7日の金曜日、ワインクラブに「日本への無料の貨物を送る気があるか」と確認のうえ、2ケースのワインをドローンで運ぶよう、電話で注文したという。注文から数時間後にワインは届けられたそうで、記事には、ボトルと赤ワインが注がれたグラスを手に、ベッドに横たわるビンスキン氏の姿も。この出来事は『デイリー』を引用する形で、『日刊スポーツ』が記事にしてもいた。

 夫のビンスキン氏のフェイスブックは誰でも閲覧可能で、〈happy hour drone wine〉とのコメントで、『デイリー』が引用した投稿が確認できる。このほか船内から撮影したと思しき写真がちらほら見受けられるので、ダイヤモンド号の乗客であることは、どうやら間違いないらしい。もっとも、

「許可なくドローンは飛ばせないはずですが……」

 とクルーズ船の運営会社「カーニバル・ジャパン」の広報は首をひねる。ドローンでワインを配達するなんて芸当が、ほんとうに可能なのだろうか。

 先のビンスキン氏のフェイスブックには〈日本の沿岸警備隊は何が起きているのかわからなかった〉というドローンが飛んできた際についての記述もある。ならば、と横浜港湾局に聞いてみると、

「その報道は把握していて、事実確認中です。ですが、現時点でドローンを飛ばされたとの報告はありません。ドローンを飛ばすのには当然申請が必要で、われわれ港湾だけではなく、国土交通省の許可なども必要になってくるはず。それに、ワインを運ぶよう依頼したのは外国のご夫婦と聞いていますが、日本でそんなサービスを行う会社はあるのでしょうか」(港湾局の客船事業室)

 ダイヤモンド号を巡っては、露のニュースサイト『スプートニク』が〈乗客デッキに、薬の提供を要請するプラカードが掲示された〉と、乗客からの“SOS”の模様を報じてもいる。実際に医薬品不足は深刻と伝えられるが、そのほかの物資については、確保する手段はある程度もうけられているようだ。

「日本人の乗客には、ご家族に現地まで欲しいものを持ってきてもらい、船内で受け取っているかたもいらっしゃいます。それ以外の要望にも、船内のクルーが、基本的に対応しているようです」

 というから、ワインが欲しいならドローンを飛ばす必要性は、あまりなさそう。

 種を明かせば、一連の投稿のあとビンスキン氏は、〈人々はまだおとぎ話を信じていますか〉と投稿している。付言すれば、氏が手に持っていたワインは「キム・クロフォード」という銘柄で、発売元はキリン……。とはいえ、もし本当にドローンでの勝手な輸送が可能であったとすれば、日本のコケンに関わりかねない話である。

「まあ、『デイリーメール』が書くことですからね。世界最古のタブロイド誌だけあって、影響力は大きく、また読者の喜ばせ方も知っている。過激な見出しはおなじみですよ。もしかすると誌が得意とする“ユーモア”のひとつなのかもしれませんね。ダイヤモンド号の乗客たちが、いかに暇をもてあましているか、という話でしょう」(海外事情に明るいジャーナリスト)

 ワインの色よろしく、“真っ赤なウソ”のエピソードである。

週刊新潮WEB取材班

2020年2月11日掲載

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