【新型コロナウイルス】恐怖の武漢を「脱出した邦人」「残った邦人」それぞれの選択

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人民解放軍が…

 そうして「死の中心」に残った彼が言うには、

「現地の人が使う激安スーパーからは物がなくなっているようですが、私たちが使う外国人向けスーパーは品不足ということはない。ただし、入り口に警備員が立っていて、額に体温計を当てられ、平熱でないと中に入れてもらえません」

 このようにスーパーで物資は調達できるものの、

「混乱がいつまで続くか分からないのが不安です。だから、できるだけ備蓄に回すようにしていて、日々の食事は中国語で『外売(ワイマイ)』と呼ばれるデリバリーで済ませるようにしています。市内は車での移動も規制されているんですが、デリバリーは電動バイクで配達してくれ、これは自転車扱いなので自由に移動できるんです。マクドナルドやケンタッキーのデリバリーを『主食』にして備蓄を減らさないようにしています」(同)

 とはいえ、デリバリーということは調理人や配達人の手に触れたものを口に入れ、あるいはその容器を受け取ることになる。抵抗はないのか。

「今回のウイルスは熱に弱いらしいとの噂があるので、デリバリー食品を載せた皿が溶けるのではないかというくらい、電子レンジでガンガンに温め直してから食べています」(同)

 また先の「脱出邦人」は、

「デマに悩まされました。武漢市内を封鎖エリア、患者エリア、医療関係者のハブエリアの三つに分け、それぞれの往来を禁じるという情報がSNS上で流れましたが、実際、そんな区分けがされることはありませんでした」

 さらに北京在住邦人曰く、

「今回のウイルスは、米中対立が激化しているなかで米国政府のスパイがばら撒(ま)いたなんて陰謀論が出回っている。本気で信じている人もいます」

 そして極め付きは、

「1月24日の午後5時から9時にかけては外出するなという情報が拡散されました。市内に散らばっている患者をひとつの病院に移送・集約した上で、人民解放軍が空から消毒液を撒くからと。そうなれば、どんな消毒液なのか分からないので、4時間だけでなく当分、家から出ないほうがいいのではないかと恐れていたんですが、これもデマでした」(先の「残留邦人」)

 人民解放軍ならそういう荒っぽいことをやりかねないと思わせるところがリアルである――。

週刊新潮 2020年2月6日号掲載

特集「爆発的感染力で『パンデミック』! 武漢を脱出した日本人 留まった日本人に緊急取材『新型肺炎』との果てなき闘い」より

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