としまえん閉園後に「ハリー・ポッター」のテーマパーク TDLのライバルになるか?

ビジネス 企業・業界 2020年2月5日掲載

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“震災公園”に建設

 読売新聞は2月3日の朝刊で、1面、政治・経済面、そして第2社会面を使って、としまえん閉園のニュースを伝えた。まずは各面の見出しをご紹介しよう。

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◆1面「としまえん跡 ハリポタ施設 テーマパーク 23年春めど ワーナー 一部借地」

◆政治・経済(4ページ)「ワーナー 東京の集客力期待 テーマパーク 国内好調」

◆第2社会面(32ページ)「にぎわいと防災 両立 『としまえん』跡 再開発 被災者受け入れ拠点に」(註:引用に際してはデイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)。

 多岐にわたる報道が行われたことが分かる。読売新聞の紙面を紹介したいが、相当な分量だ。そのため記事内容を要約し、箇条書きにさせていただく。

▼としまえんは1926年に開園。敷地は約20ヘクタールあり、現在は西武グループが所有。

▼2011年の東日本大震災後、東京都が防災対策の一環として大規模公園の計画を立案。西武側に買収を提案したが、近年は交渉が停滞していた。しかし昨年にワーナー側がハリー・ポッターのテーマパークを提案、協議が一気に動き出した。

▼ハリー・ポッターのテーマパークは2023年春のオープンを目指す。映画撮影に使われたセットを見学できるロンドンのテーマパークを参考に検討が進んでいる。ロンドンでは、巨大な魔法学校のホールや商店街、鉄道などのセットを散策したり、魔法のつえなどの小道具を間近に見学したりすることができる。

▼日本のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)では「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」が稼働しているが、こちらはアトラクションが最大のセールスポイント。

 これに対し、としまえんの跡地に建設されるテーマパークは魔法学校や商店街など“映画セットの再現”に重点を置く方針で、こうしたテーマパークは「スタジオ型」と呼ばれている。

▼アメリカの調査会社などによると、世界のテーマパークにおける入場者数は2018年のランキングで、1位がアメリカ、ウォルト・ディズニー・ランド内のマジックキングダム。2位もアメリカのアナハイムにあるディズニーランド。

 だが3位はTDL(東京ディズニーランド)、4位はUSJ、5位はTDS(東京ディズニーシー)と、ベスト5を日米が独占している。

 このためワーナー側は早くから日本市場に着目、既にUSJでアトラクションが稼働している大阪市を除外し、東京23区内に位置するとしまえんを選択したようだ。

▼東日本大震災の発生時、都内を中心に公共交通機関がマヒし、多数の帰宅困難者が発生した。としまえんの跡地に建設される公園は、被災者の受け入れや、消防・自衛隊の活動拠点として活用される見通し。

今後も続く閉園

 読売新聞は、どちらかと言えば「東京にハリー・ポッターのテーマパークが誕生する」というニュースに重点を置いた紙面とした。

 だが、他の全国紙、スポーツ紙やテレビ局、加えてツイッターを中心とするSNSでは、「としまえんが閉園」というニュースとして報じられ、猛スピードで拡散していった。

 特にツイッターでは多くの人が閉園を惜しみ、「としまえん」はホットワードとなった。「話題のツイート」からいくつかご紹介しよう。

《「としまえん」の閉園。とても残念。地域に根差した遊園地として長~く東京都民、埼玉県民を中心に楽しませてくれていたのに、今度は海外からの集客を狙って「ハリーポッター」にするとは。「としまえん」より長く、時代を超えて集客出来るとは到底思えない》

《「としまえん」が閉園。この少子高齢社会では持たぬか。もはや遊園地跡地は廃墟か墓地斎場が定番》

《としまえん閉店(註:原文ママ)か~。時代の流れには逆らえん!! でも寂しいな~。昔むかし本当に小さい頃にじいちゃんとばあちゃんに連れてってもらったな~。向ヶ丘遊園や二子玉川遊園地も、閉園した時は寂しかったな~!! 知ってる人は少なさそうだけど》
(註:改行を省略したり、句読点を補ったりした)

 いずれも共感を集めたツイートだと思われるが、では、テーマパークの“プロ”は、としまえん閉園とハリー・ポッターのテーマパークが建設されることを、どのように見ているのだろうか。

 書籍『なぜテーマパークでは朝から風船を売っているのか?』(河出書房新社)などの著者である清水群氏は、筑波大学大学院システム情報工学研究科を修了し、2006年にオリエンタルランドに入社。アトラクションのメンテナンスや部品設計、安全管理などを担当した。

 16年に独立を果たし、現在も日本で唯一の「テーマパークコンサルタント」として活動を続けている。

 清水氏に「としまえん閉園」の直接的な感想を聞くと、「率直に申し上げて、業界ではある程度、予想されていたことだと思います」と指摘する。

「テーマパークならTDLとTDS、そしてUSJが勝ち組の筆頭ですが、遊園地はよみうりランドがイルミネーションとアトラクション『グッジョバ!!』の人気などでV字回復を果たしました。その一方で、全国では経営が厳しいテーマパークや遊園地も少なくありません。少子高齢化やレジャーの多様化により、『休日は遊園地に家族で行く』時代は過去のものになったからです。例えば北九州市にあったテーマパークの『スペースワールド』は2017年末に閉園に追い込まれました」

 この問題を経営サイドから見ると、設備投資を行うかどうかが鍵になるという。

ハリー・ポッターでも収益性は……?

 清水氏によると、ジェットコースターに代表される遊園地のアトラクションは、稼働から20~30年で老朽化することが一般的だという。

 全国の少なからぬ遊園地が施設の老朽化に直面しているが、リニューアルとなると何十億円という設備投資が必要になる。

 投資に見合う収益が上がれば問題ないが、前に見た通り、少子高齢化の進展やレジャーの多様化により、経営サイドが投資に二の足を踏むような状況になっているのだ。

「今年1月に西武鉄道は西武園ゆうえんちで大規模改修を行うため、約100億円を投じると発表しました。この時、業界関係者の中には、『西武グループが西武園ゆうえんちに投資するなら、としまえんはもしかすると……』と予感を得た人もいたのではないでしょうか。としまえんは昨年にプールで死亡事故が起きたこともあり、その影響もゼロではないと思います」

 清水氏によると、スペースワールドと、としまえんの閉園は、「テーマパーク・遊園地の終わりの始まり」と位置づけられるという。

「今後は、巨額の設備投資に耐えられない遊園地は閉園するか、もしくはジェットコースターなどのアトラクションを撤去、代わりにアスレチック施設を拡充したり、“高級なキャンプ”と言われるグランピングの施設にリニューアルしたりする、そんな動きが加速するかもしれません。アスレチックもグランピングも、機械設備に比べると維持管理のコストを削減することが可能で、仮に集客数が落ちても収支のバランスがとれることで遊園地の存続が見込まれるわけです」

 一方、鳴り物入りでオープンすることになるハリー・ポッターのテーマパークだが、センセーショナルな報道とは違って、“軽量級”の施設になる可能性もあるという。

「日本国内におけるテーマパークの市場規模は『極めて緩やかな右肩上がり』ではあります。とはいえ、TDLとTDS、そしてUSJの寡占状態にあるのも事実です。現状、この3施設に入場者数で肉薄する“第4のテーマパーク”が国内に誕生する見通しは低いでしょう。確かにハリー・ポッターはファンが多く、コンテンツとしては魅力的です。しかしTDLやUSJに匹敵する、もしくは凌駕する集客を獲得できるかと言えば、率直に言って疑問です」

 練馬区に位置しているのだから、地の利は抜群だ。むしろ千葉県に位置するTDLやTDSのほうがよほど不便だと言える。

 だが、その分、ハリー・ポッターのテーマパークは多くの“商売敵”と戦争を強いられるわけだ。

 テーマパークなら、近くの池袋に“屋内型”のナンジャタウンがある。遊園地なら、前出のよみうりランドや西武園ゆうえんち、それに浅草花やしきなどがライバルになるだろう。

 子供は動物園も大好きだ。上野動物園や東武動物公園も依然として人気が高い。水族館ならサンシャイン水族館、すみだ水族館、横浜・八景島シーパラダイス……などなど。清水氏が「レジャーの多様化」を指摘した通り、確かに枚挙に遑(いとま)がないのだ。

「ワーナー側も事前調査を入念に実施し、入場者数を予測してから計画を立てるでしょう。思い切って大規模な資本を投下し、TDLやUSJを凌駕するテーマ・パークを建設するという可能性は低いのではないでしょうか。スタジオ型という報道にもあるとおり、収益を上げることを最優先とし、コストパフォーマンスを追求する経営姿勢になるはずだと考えています」(同・清水氏)

 最後に清水氏は「お住まいの近所に、遊んだ思い出のある遊園地があれば、ぜひ休日に足を運んでみてください」と呼びかける。

「としまえんの閉園からも明らかですが、なくなると発表されてからは遅いのです。閉園を惜しむような事態が現実のものにならないためにも、なるべく遊びに出かけてほしいですね」

週刊新潮WEB取材班