「東京ラブストーリー」が新キャストでリメイク SNSでは賛否両論、プロの意見は?
ど真ん中直球の恋愛ドラマ
次の相違点は放送方法だ。91年版が「月9」でオンエアされたのは先に見た通りだが、リメイク版はFOD(フジテレビ・オン・デマンド)とAmazon Prime Videoでネット配信される。
さらにストーリーも違う可能性があるようなのだが、これについては、少し説明が必要だ。原作と91年度版のドラマに詳しい記者が言う。
「ウィキペディアは原作とドラマの相違点として4点を挙げていますが、とてもそんなものではありません。原作のコミック版とテレビドラマ版は、登場人物の名前とキャラクターは原作通りでも、実際のストーリーは別物と言っていいほど変えられています。そして今回のリメイク版も、大幅に原作と異なる可能性があるのではないかとSNSなどで話題になっています」
フジテレビのプレスリリースには原作の柴門ふみ氏のコメントも掲載されているのだが、これがなかなか意味深なのだ。
《今回のドラマ化ではキャラクターは活かしつつ舞台は現代ということで、原作にはないスマホやSNSも当然登場することでしょう。東京も随分様変わりしました。スタバもユニクロも無かった時代で、カンチも三上も煙草を吸っていました》
例えばドラマの第2話は、ちょっとした連絡ミスが原因で、ヒロインの赤名リカが喫茶店で延々と永尾完治を待ち続けるシーンがある。
原作には存在しない場面で、ドラマにおける名シーンの1つだ。しかし、この設定が現代では成立しないのは誰の目にも明らかだろう。91年の赤名リカ=鈴木保奈美は何度も店内に置かれた公衆電話から連絡を取ろうとするが、今ならスマホで簡単に所在を確認できる。
――と、駆け足で91年版と20年版の比較を行ったが、テレビドラマの“プロ”は今回のリメイクをどう評価するのだろうか。
81年からテレビマンユニオンでテレビドキュメンタリーやドラマの制作に携わり、2010年には上智大学文学部教授(メディア文化論)に就任した碓井広義氏に取材を依頼し、まずは91年版を総括してもらった。
「バブル景気は91年2月に終わり、『東京ラブストーリー』は1月から3月まで放送されました。オンエア当時、世の中はむしろバブルの絶頂期という状態であり、それはドラマの成功と密接な関係があったと思います。ちなみに当時、私はディズニーランドの近くに住んでいましたが、周辺のリゾートホテルはクリスマスイブになると若いカップルで埋め尽くされました。『どうして若者たちが、あんなにお金を持っているんだろう』と不思議に思ったほどです」
71年から74年までの間に出生した「団塊ジュニア」は当時、20歳から17歳。日本社会が“若者中心文化”の側面を持ち、いわゆる“恋愛至上主義”の風潮が顕著だった。
「そうした時代を背景に、ど真ん中直球の恋愛ドラマ、青春ドラマとして制作されたのが『東京ラブストーリー』だったと思います。何にも忖度せず、ひたすら恋愛する若者の姿を追った。フジテレビの『月9』だからこそ成立した企画でしょう。原作のコミック版は素晴らしい群像劇ですが、ドラマ版はいわゆる“時代と寝た”魅力に満ちています。主人公とヒロインは会社員ですが、仕事をする場面の印象は乏しく、24時間、恋愛のことだけを考えているようです。ところが、そんな描写が当時の雰囲気とマッチし、視聴者の心を鷲づかみにしたのです」(同・碓井教授)
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