反中国だった台湾選挙 映画のような盛り上がり(KAZUYA)

国際 週刊新潮 2020年1月30日号掲載

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 1月11日に投開票が行われた台湾総統選挙では、過去最多の得票で民主進歩党の蔡英文氏が再選されました。

 今回の当選の最大の要因は、皮肉にも台湾統一を目指す中国共産党の習近平国家主席でしょう。習主席は台湾の併合に武力行使も辞さない姿勢を見せつつ、香港においては多数の催涙弾で強権的に抑えつける姿勢を見せたため、海を超えて台湾にも警戒感が共有されています。公務員の年金改革などで支持率が落ちて再選が危ぶまれていた蔡氏ですが、香港デモが大きな影響を及ぼし、一国二制度の危険性があらわになりました。

 結果的に、中国とは距離を取り、台湾の自由で民主的な社会を守るとする蔡氏が息を吹き返すことになったのです。

 さらにオーストラリアに亡命を求めた中国人男性が、自分はスパイで活動の一つとして台湾総統選挙において国民党の韓国瑜氏が有利になるような工作をしていたと暴露したのです。当然韓氏も中国も否定していますが、中国ならやっていても不思議ではない話です。

 こうした状況が重なり、中国との経済的なつながりで台湾を金持ちにするとした韓氏は苦境に陥り、落選しました。

 当然中国からすると面白くありません。蔡氏再選を受けて、中国の王毅外相は台湾の独立勢力は「1万年間にわたって悪評を残す」などと言っているようです。いや、悪評で言えば中国共産党が圧倒的に上でしょう。

 今回の総統選挙に合わせて僕も台湾に行ってきました。

 投票前日の10日、蔡氏最後の選挙運動集会に行ってみると、おびただしい人、人、人。日本では考えられないほどの熱気に包まれていました。人が多すぎて演説のステージが見えないため、いくつもの巨大モニターが設置されていたのも印象的です。

 19時から始まり、22時まで続いた集会ですが、蔡氏が登場したのは最後の30分ほどです。それまでは別の人の演説や映像を用いて聴衆を退屈させない演出をしていました。聴衆は旗を振ったり、スマホのライトを掲げたり、さながら音楽フェスの様相です。

 蔡氏が登場し、演説を始めると盛り上がりはピークに達します。演説中にさりげなく音楽が流れています。映画と同じように、演説を感動的に演出するためのものです。実際、周囲の盛り上がりと、演説+音楽で映画の世界にいるのかと錯覚するほどです。

 日本の選挙活動といえば何十年もほとんど変化がなく面白みもないものですから、新鮮でしたし、日本でそのまま出来るとは思いませんが、研究する必要はあるでしょう。

 米中対立の狭間で台湾の重要性は増しています。日本としては自由な民主主義社会の台湾と協力しつつ、共産党の独裁が続く中国と向き合う必要があるでしょう。

 日本にとって重要なのは、台湾が反日ではないという点です。台湾と同様に、かつて日本の統治時代が存在したあの国とは中々上手く関係を築くことが出来ませんが、台湾はまだ親日的なのが救いです。

KAZUYA
1988年生まれ、北海道出身。12年、YouTubeで「KAZUYA Channel」を開設し、政治や安全保障に関する話題をほぼ毎日投稿。チャンネル登録者69万人、総視聴数は1億4千万回を超える。近著に『日本人が知っておくべき「日本国憲法」の話』(KKベストセラーズ)