美空ひばり聖地消滅のピンチ! 不肖の長男の8億円借金苦で売りに出されたひばり御殿

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年利15%の高利で

 加藤氏が相続したひばりの遺産は、大きく分けてひばりプロダクションと不動産がある。ひばりプロダクションは、テレビやCMから入ってくる著作権、カラオケの歌唱印税、またメモリアルコンサートで得られる収入、ファンクラブ(約2200人)の会費などがある。信用調査機関によると、年商は1億数千万円。加藤氏の年収はかつて数千万円にのぼったと見られる。

 一方、不動産では最も大きなものが、現在のひばり記念館の土地建物だ。敷地面積が563平方メートルと、「御殿」と呼ばれただけあるが、不動産の登記簿謄本からは、意外な過去が見える。パチンコ機メーカーなどから、億単位の資金を借りてきたことが記されているのだ。

 そうした経緯の中でも、問題なのは、2017年の4月に借りた金だ。不動産金融で知られる「アサックス」が極度額6億1千万円の「根抵当権」を付けている。これは極度額の範囲なら何度でも借り入れと返済ができるという契約だ。さらに、同年6月には極度額を7億1千万円に引き上げ、9月にはさらに8億円までアップしている。また、加藤氏は、同時期に世田谷区にある自宅マンションも、その借金の「共同担保」に入れている。02年に購入した2億円の物件だ。

 この登記簿を見た不動産関係者は、

「アサックスは、主に銀行からもはや借りられない人が使う会社で、金利が年6~8%かかります。単純計算ですが、利息だけで年4千万~6千万円を払わなくてはなりません。銀行の事業ローンが2%台ですから、いかに高いか分るでしょう。しかも、アサックスの場合、返済できなければ、すぐに不動産が競売にかけられてしまう」

 そんな金融機関に頼っていることからして驚きだが、資金繰りの苦しさをいよいよ露呈させたのが19年の11月。加藤氏は渋谷区の不動産金融業者からも2千万円を借り入れていた。金利はなんと年15%。かつては、「¥マネーの虎」(日本テレビ系)に出資者として出演し、「ビジネスとは――」とご高説を垂れ、カネにものを言わせる側に立っていた加藤氏に何があったのだろうか。

「加藤さんの会社の資金繰りが悪化したのは、10年以上前からのことなんです」

 とは加藤氏の知人である。

「最初の躓きは、08年のことでした。加藤さんは京都の嵐山にあった『美空ひばり記念館』の施設を買い取って、『京都嵐山ひばり座』としてリニューアルオープンさせたのです。高級ホテルのような豪華な造りで、ひばりさんが映画に出演した時の衣装や台本などが陳列されていました。これにつぎ込んだお金が約13億円です」

 この年、加藤氏はパチンコ機メーカーの「京楽産業」から10億円を借りている。同社の関係者によると、パチンコ台にひばりの画像を使わせる契約を交わし、〈美空ひばり不死鳥伝説〉などの著作権収入から返済してゆく契約だったという。ところが、肝心のひばり座は赤字を垂れ流し、13年に閉館に追い込まれてしまう。

「『ひばり座』を維持できなかったのは、ファンの“聖地”が無くなるという意味でも大きな痛手でした。その代わりの意味もあって、加藤さんは、翌年、東京・目黒のひばり邸に『美空ひばり記念館』をオープンさせたのです。しかし、巨額の負債は残ったままでした」(同)

 このマイナスを挽回する意味もあったのか、ひばりプロダクションは17年に、AKB48や五木ひろし、さだまさし、天童よしみといった豪華ゲストを呼んで開かれた「美空ひばり生誕80周年特別企画in東京ドーム」を主催。また記念CDも大々的に発売する。

「ですが、ひばりファンも高齢化でコンサートに足を運ぶ客は少なくなっています。豪華ゲストで集客しようとしたものの、かかった費用がさらに重くのしかかっていたのです」(同)

 加藤氏が高利の不動産担保金融に手を出すのは、この後のこと。しかし、利払いに耐え切れなくなり、夏ごろから記念館の売り先を探し始めていた。

(2)へつづく

週刊新潮 2020年1月2・9日号掲載

特集「『美空ひばり』聖地消滅のピンチ! 不肖の長男が『8億円借金苦』で売りに出した『ひばり御殿』」より

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