韓国で未だ続く“Me Too”で著名人が次々失脚 今度は国民的歌手を元ホステスが告発

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国民的歌手を告発したYouTubeチャンネル

 現在“MeToo”告発の渦中にある国民的歌手キム・ゴンモも、被害を主張する女性を逆に告訴し返している。その経緯は以下の通りだ。

 キム・ゴンモは1968年生まれの51歳。90年代にトップ歌手としての地位を確立、現在もバラティ番組をはじめ幅広く活躍する人気芸能人だ。2019年10月に13歳年下のピアニアストと入籍し、また注目を集めた矢先だった。

 その性的暴行疑惑を提起したのは、「縦横研究所」と名乗るYouTubeチャンネル。これは元保守系議員の弁護士カン・ヨンソクと元MBC記者キム・セインの2人が、政治から芸能まで刺激的な話題を取り上げる韓国の人気チャンネルだ。

「縦横~」は12月6日に「衝撃の単独スクープ」と称して、ルームサロン(高級個室クラブ)のホステスだったという女性Aの証言を伝えた。それによるとキム・ゴンモは2016年8月に来店した際、ほかのホステスを退室させ、2人きりでAに性的な行為を強制したという。カン弁護士は12月9日、女性の代理人としてソウル中央地検に告訴状を提出。続いて翌10日には「縦横~」がまた、2007年にキム・ゴンモに暴力を振るわれたという風俗店マネージャーの女性Bの証言を公開した。

 一方のキム・ゴンモは「被害女性が誰かも知らない」とし、同月13日にAを誣告罪などで告訴。だが16日になると、今度は別のユーチューバーがキム・ゴンモの性癖を暴露する元ホステス女性Cの電話インタビューを公開した。性的暴行があったルームサロンに一時在籍したというCは、店のマダムからキム・ゴンモが体毛を処理していない女性を好むと教えられたという。

興味本位の報道に「無責任」との非難の声も

 告訴し返して以後、キム・ゴンモのスケジュールは相次いでキャンセルされている。2019年12月~2020年2月に予定されていた全国ツアーは白紙に。疑惑が浮上した後にキム・ゴンモを出演させたバラエティ番組には視聴者の非難が殺到し、製作陣はそれ以降の降板を伝えた。本人の主張通り訴えが濡れ衣なら大変な損害だが、真相は裁判の結果に委ねるしかない。

 一連の騒動を巡り、興味本位な一部メディアの姿勢を非難する報道もある。疑惑を提起しているYouTubeチャンネルは放送法の対象外であり、テレビなど既存メディアのような規制ルールがない「野放し状態」。「縦横~」はまた、これまで扇情的な見出しが批判を招いてもいる。その内容を深く吟味もせず右から左へ伝える報道姿勢は無責任ではないか、というわけだ。また告発者がルームサロンのホステスだった点について、「風俗店の女性との性的な行為が暴行になるのか」といった疑問を呈したメディアも複数あった。だがこれも、男性中心の歪んだ見方との批判を浴びている。

 2018年5月発表の調査結果 によれば、19~69歳の62.0%が「韓国社会は女性に不平等」と回答。さらに79.8%の回答者が、「最近の“MeToo”運動を支持する」と答えた。男女の内訳は女性83.8%、男性75.8%だ。

 諸問題をはらみながらも、国民の高い関心と支持を背景に突き進んでいく韓国の“MeToo”運動。それがどんな変化を韓国社会にもたらすのか、注視していきたい。

高月靖(ノンフィクション・ライター)

週刊新潮WEB取材班

2020年1月9日掲載

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