西武、「大乱闘」「神走塁」「消えた白球」…喜怒哀楽の2019年シーズンを振り返る

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 菊池雄星の大リーグ、マリナーズ移籍に加え、浅村栄斗が楽天にFA移籍と投打の主力2人が抜けた西武だったが、シーズン終盤にソフトバンクとのデッドヒートを制して2年連続リーグ優勝を達成。だが、CSでは前年同様、ソフトバンクの逆転日本シリーズ進出を許す結果となり、再び悔しさを噛みしめた。そんな西武の2019年シーズンでの印象深いシーンを振り返ってみよう。

 死球がきっかけで、3人が退場する乱闘劇が繰り広げられたのが、8月13日のオリックス戦(メットライフドーム)だった。5対1とリードした西武は4回2死満塁のピンチに、2番手・森脇亮介が若月健矢の左肘を直撃する死球を与えてしまう。先発・齊藤大将も初回に福田周平、3回に後藤駿太に死球を与えており、この日チーム3つ目の死球に、若月の怒りが爆発する。

 ところが、若月がマウンドに向かうよりも早く、佐竹学一塁コーチがマウンドに突進し、森脇の胸を両手で思いきり突いたことから、これを合図に、両軍ナイン入り乱れての乱闘劇が勃発。罵声が飛び交うなか、佐竹コーチを止めようとした西武・小野和義投手コーチのメガネが割れ、指を踏まれるなど大混乱に。近年では、派手な乱闘シーンがあまり見られなくなったとあって、初回に左越え3ランを放った外崎修汰も「ああいう本格的なのは初めて。体が接触して正直怖かった」とコメントした。

 佐竹コーチは退場となり、警告試合が宣告されて試合再開となったが、4回裏、今度はオリックスの先発・田嶋大樹が森友哉に死球を与え、2人目の退場。さらに9回表2死満塁で、西武の5番手・平良海馬が福田にこの日2度目の死球を与え、退場者はプロ野球ワーストタイの3人となった。1試合で3人退場は過去に5例あるが、いずれもひとつのプレーが原因で全員が退場したもの。3人のいずれもが別々のプレーで“時間差退場”になったのは、初の珍事だった。

 平良の退場時に西村徳文監督から「4つはないでしょう」と責められた辻発彦監督は「後味が悪い。4つも当てて、プロとして恥ずかしいし、申し訳ない」と肩をすぼめた。12球団でワーストの93与死球と大荒れだった投手陣の制球力アップも2020年の重要課題である。

 辻監督といえば、現役時代の1987年、巨人との日本シリーズ第6戦で、一塁から単打で一気に生還した伝説のプレーを思い出す50代以上のファンも多いはずだが、この“伝説の走塁”の再現とも言うべきシーンが見られたのが、6月11日のメットライフドームでの試合。相手はくしくも巨人だった。

 1回裏、西武は1死から源田壮亮が中前安打で出塁。2死後、山川穂高がフルカウントになると、スタートを切った。山川の打球は左中間寄りの痛烈な当たり。センター・丸佳浩が回り込んで捕球しようとしたが、源田の俊足を警戒するあまり、ボールから目を切るのが早く、ファンブルしてもたつく。この時点で、三塁ベースの手前まで到達していた源田はさらに加速して三塁を回り、スライディングで先制のホームを踏んだ。

 好走塁で勝利に貢献した源田は「辻監督の(走塁)は知ってました。今日はエラーですけど……。いい走塁だった? はい」とまんざらでもなさそう。その辻監督も「よみがえったろう? みんなそう思っていると思ったよ。オレも思い出したから」とかつて自身が演じた“神走塁”に思いを馳せたが、「でも、オレのときは(スタートを切って)走ってないし、(守備で)ジャッグルもしていない。今日のは伝説やないやろ」とニヤリ。

 もし日本シリーズに進出すれば、32年前同様、巨人との因縁対決が再現するところだったが、前年に続いてCSでソフトバンクに敗れ、神走塁の称号も周東佑京に奪われるという皮肉な結果になった。

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