「中国」「インド」産のジェネリック薬が危ない 発がん性物質が検出も

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研究に予算を割けない

 これに関し、アメリカの著名なジャーナリスト、キャサリン・エバンさんの著書『Bottle of Lies』が話題になっているという。ナビタスクリニック川崎の内科医、谷本哲也氏は、

「インドや中国のジェネリック工場を取材し、FDAの内部文書を入手し、規制当局や製薬会社の担当者らにインタビューした内容がまとめられています」

 と言って、続ける。

「エバンさんと私は今年9月、ドイツのハンブルクで共同講演を行いました。彼女は、インドのジェネリックメーカー大手、ランバクシー・ラボラトリーズ(当時)を取材した際、製剤への不純物混入やいい加減な無菌管理、設備の老朽化など、多くの問題があったことを発表しました。また、FDAは査察官をインドや中国に派遣し、立ち入り検査をしていますが、査察期間が事前に通告されるので工場側は準備し、設備の不具合を隠蔽したり、データを改竄したりと、対策を講じてしまう。さらには査察官を高級ホテルに泊め、ゴルフや買い物などで接待漬けにしていたそうです」

 インドや中国に製造を任せるのはコスト削減のためだが、国内の200社近いジェネリックメーカーのうち、原薬などの製造国を公開しているのは、まだ一部だという。当局が公開を義務づけていないのだ。

 岡田医師は、先に挙げたアンジオテンシンII受容体拮抗薬について、

「2017年、世界で最も権威ある学会であるAHA(アメリカ心臓病学会)の論文誌に、この薬を服用していた患者さんの副作用の数を比較すると、先行品よりジェネリックのほうが8~14%高かったという興味深い研究結果が載りました」

 と加えた。ジェネリックのレベルが上がっていること、保険制度を破綻させないために必要であることは、だれもが強調する。そのうえで、岡田医師はこうまとめる。

「ジェネリックを論じる際の前提は、あらゆることがわかっていないということ。効果や副作用に関し、一部にAHAの論文誌のような例はあるものの、万人が納得できるエビデンスは、まだ揃っていないのです。そもそも特許が切れた状態で安く売るのが目的ですから、新薬のように研究に予算を割けません。学術調査の対象になりにくいのです」

 では、我々はどう気をつければいいのか。総合内科専門医である秋津医院の秋津壽男院長はこう助言する。

「できるだけ聞いたことがある会社のジェネリックにしたほうがいい、とは言えるでしょう。中小メーカーでは、万一薬害が発生したとき補償が受けられないかもしれないからです」

 薬剤師の堀さんは、

「原薬がどこで作られているのか、すべての薬で情報開示されているわけではないものの、薬局で聞くなりして確認するのはいいことです。そのような意識が高まれば国や製薬会社もプレッシャーを感じ、情報公開を進めていくでしょう」

 と言う。どこでどうやって作られたのか。20年をジェネリック元年と謳うなら、厚労省は情報開示を積極的に進めるべきだろう。しかし、いま患者はどうすべきか。

「私の考え方は、初めての薬はなるべくジェネリックにしましょう、というもの。医師は最初に薬を処方する際は、患者さんに合うかどうか真剣にチェックしますが、ジェネリックに替えるときは、それほど注意を払わないことが多いからです。最初から注意深くジェネリックを処方しておけば、それが基準になって基本的には問題が生じません。もし合わなければ、量や用法を調整すればいい」(同)

 あるいは、「つなぎやこね方」にこだわりがある薬なら先発薬を選べばよい。まずは、先発薬と必ずしも同じではないと認識して、医師や薬剤師に相談し、リスク管理をすることだ。

週刊新潮 2019年12月26日号掲載

特集「厚労省が推奨しても医者が飲まない『ジェネリック薬』」より

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