日本の読解力が世界15位に急落の元凶は「スマホ」と「文科省」だ

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「論理国語」って何?

 活字離れと読解力低下の因果関係は、今回のPISAのアンケート結果からも推察できる。

「読書を全くしない生徒の割合を見ると、PISAの結果がトップだった中国(北京、上海、江蘇、浙江の4地域が対象)が3・3%であるのに対し、日本は25・7%にも上る。また、読書を月に数回する生徒の点数はOECD全体で平均より45点高く、新聞を月に数回読む生徒も平均より33点高い。たった月数回でも本を読み新聞を読むことが読解力に大きな影響を与え、点数に劇的な差となって表れていると言えます」(藤原氏)

 日本の子どもたちの読解力低下に歯止めをかけるには、何はともあれ活字離れを食い止める「国語教育」が必要なようである。実際、前出の八幡氏も、

「ツイッターなどで短文ばかりに慣れてしまうことの弊害を、どうにかして国語教育で補うべきでしょう」

 こう警鐘を鳴らすのだが、その国語教育自体がどうにもおかしな方向に進んでいるのだ。

「PISAの結果は、確かに日本の子どもたちの読解力が低下していることを示してはいます。しかし、PISAの読解力テストは、電子レンジの安全性を宣伝する企業のサイトを読ませるような、いわゆる実学に則(のっと)ったもので、それ以上でも以下でもない。にも拘(かか)わらず、文科省はこのPISAのテストに合わせるかのような教育方針に変えようとしています」(藤原氏)

 それが、22年度から実施される高校の新学習指導要領である。

「新学習指導要領では、国語科の選択科目が再構成され、論理的に書き批判的に読む力を育む『論理国語』や、共感し想像しながら書いて読む力を育てる『文学国語』などの4科目に分かれます。来年度から始まる大学入学共通テストで、契約書などを読み解く問題が出題されることを踏まえると、多くは『論理国語』を選択することになるでしょう。そもそも、論理的な文章なのか、文学的な文章なのかを明確に分けることなどできませんが、『論理国語』の選択によって、近現代の文学作品に触れる機会が減少する。なんと浅ましいことでしょう」(同)

 だいたい、「論理国語」のネーミングからして文科省の「国語センス」に首をひねりたくなる。藤原氏の言を持ち出すまでもなく、論理のない国語など、四則計算なき算数と言っているに等しいのだから。当の文科省に訊(き)くと、

「『論理国語』という科目が新設されることで注目を集めていますが、PISAが定義する読解力に関連した教育でいうと、以前から『情報活用能力』を重視してきました」(PISAの結果を分析する担当者)

 ならば、情報活用能力とやらは育っておらず、その延長線上で「論理国語」を導入しても、成算はないように思えるのは気のせいだろうか……。

(2)へつづく

週刊新潮 2019年12月19日号掲載

特集「元凶は『文科省』と『SNS』! OECDテスト『読解力15位』に急落した『国語』の危機」より

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