強制わいせつ事件 「初鹿議員」謝罪コメントはなぜ0点なのか

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 知人女性への強制わいせつ事件で書類送検された立憲民主党の初鹿明博代議士が、17日、記者会見を行った。タクシー内で無理やり女性の顔を股間に近づけようとしたという恥ずかしい容疑がかけられている中、会見を開いた勇気は評価されるべきかもしれないが、会見内容そのものは中身がなかったと言われても仕方のないものだった。

「報道にありますとおり、告訴を受け、書類送検をされております。現在進行中の案件のため、お答えできることは限られますが、捜査当局に全面的に協力をしておりまして、捜査当局の判断に全面的に委ねたいと思います。お騒がせをしておりますことをおわび申し上げます」

 頭を下げてこう述べたあとは、何を聞かれても基本的には「捜査中」を理由にまともな回答を避け、事実関係についても説明をしなかったのだ。

 おそらくこれを聞いて、

「うん、そうか。世間に対しておわびしたいのだな。捜査中だから説明できないのは無理もないよ」

 と思う人はほとんどいないだろう。

 そもそもこの短いコメントには、謝罪時に避けなければいけないNGワードが含まれている。危機管理コンサルタントの田中優介氏の著書『地雷を踏むな』によれば、「お騒がせして」は使ってはいけない常套句の一つだという。同書によれば、「遺憾に存じます」「誤解を与えてしまい」「お騒がせしまして」「知らなかったとはいえ」「邁進します」の五つは、「己の非をボカしたまま、謝罪をしようという意図が見え見え」ゆえに、NGなのだという。「お騒がせし」については、

「全く謝罪になりません。なぜなら、問題を発生させたことではなく、発覚したことを詫びているだけだからです」(『地雷を踏むな』より)。

 この指摘は多くの人が共感するところだろう。所属する立憲民主党の福山哲郎幹事長のコメントもよく似ている。

「嫌疑を持たれたことは甚だ遺憾で、お詫び申し上げたい」

 こちらには、もう一つのNGワード「遺憾」が含まれている。なぜこれがダメなのか。

「どこか他人事のような印象を与えてしまいます。『遺憾』とは残念という意味だからです」(同)

 初鹿議員、福山幹事長に共通するのは、告発者への謝罪は一切口にしていない、という点だろう。あくまでも「世間をお騒がせしたこと」や「嫌疑を持たれたこと」についての感想を口にしているだけなのだ。

 田中氏に、改めてコンサルタント的な見地からこの会見コメントの感想を聞いてみた。

「基本的にセクハラに関しては、そう感じたという人がいればアウト、という基準が社会的に受け容れられつつある状況です。警察にまで訴えたということは、告発者の被害感情はとても強い。もしも事実関係で争わないのであれば、まずは被害者へのお詫びを口にして、徹底的に自分を責めるくらいの姿勢が求められるはずです。

『本当に自分はバカだ。いくらお叱りを受けても仕方がない。被害者の方にも誠心誠意対応したい』という姿勢です。

 しかし、初鹿議員の場合は、当初疑惑を否定してしまった手前、簡単にそうは詫びられないのでしょう。結果として、極めて中途半端な謝罪コメントしか出せなかった。

 党のほうも、普段は『疑惑の追及』に熱心なのだから、せめて自分たちでも徹底的に調べるし、結果如何では厳しい処分を下す、というくらいは言うべきなのに、誰に対して詫びているのかわからないようなコメントしか出せていないのは危機管理的な観点からすればアウトです」

 とりあえず、初鹿議員らからすれば不起訴になることを心から願っているのかもしれない。そうなれば「嫌疑は晴れた」と強弁できなくもないのだ。しかし、その理屈をあまり言い張ると今度は、与党のあらゆる「疑惑」についても追及できなくなる。多くのそれは立件すらされていないのだ。どういう結果が出るにせよ、立憲民主党にとっては辛い展開になるのではないだろうか。

デイリー新潮編集部

2019月12月20日掲載

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