数学者・大道芸人のピーター・フランクル行きつけのインド料理店 美味しいNIPPON

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 好きな飲食店や好物の話を聞けば、その人の人となりが解るというもの。ゆえに「名は体を表す」ならぬ、「食は体を表す」なのである 。この企画では、外国籍の著名人の方々にご登場頂き、行きつけのお店をご紹介してもらいます! 意外なお店のチョイスに驚くこと必至! 彼らの食に対する感性と経験が垣間見えちゃうんです。第19回は、ピーター・フランクルさん。今回は「ディップマハル」に伺いました!!

「数字のゼロを発明したのはインド人だと日本人の多くが勘違いしています。正しくは、ゼロを含む10進法ないしアラビア数字を発明したのがインド人なのです」

 そう語るのは数学者で大道芸人のピーター・フランクルさん。なぜこんな話をしているかというと、今回訪れたのがインド料理店だから。

 青山通りから少し脇に入ったところにある「ディップマハル」は、ピーターさん行きつけのお店だ。日本人に美味しいインド料理を提供することをコンセプトにしたお店で、

「インドの方が調理しているから味は本格的。僕は辛いのが苦手なんだけれど、カレーの辛さを調整できるのも嬉しい。ここのナンは絶品ですよ。ビリヤニも好き」

 ピーターさんは、1980年ごろ、ムンバイにある数学研究所に招かれ、約3カ月インドに滞在したことがある。

「肌の色は違うし、靴を履いていない人がたくさんいるし、英語も通じない。当時のムンバイの道には、信じられないぐらい路上生活者がたくさんいて、コカコーラも売ってない(笑)。人生で初めてカルチャーショックを受けました」

 当初はインド人に恐れすら感じ、来なければよかったと思うほどだったそう。だが、自分と違うからといって距離を置いてしまうのは、差別に繋がる。それはユダヤ人である自身が経験したことだった。

「それに気が付いてからは、『郷に入っては郷に従う』決心をしました。ヒンディー語を勉強して友人も作り、彼らと同じものを、手を使って食べるようにしました」

 現在でも、カレーを食べるときは手を使う。注文した「ほうれん草と鶏肉のカレー」をライスにかけ、手で混ぜて口に運ぶ。

「世界中旅をしてきたけれど、インドには格別の思い入れがありますね。ここの料理はそれを思い出させてくれるんです」

週刊新潮 2019年12月12日号掲載

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