理由が意外! 「保釈率」は都道府県でこんなに違う

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 食肉大手「ハンナン」の浅田満元会長は過去最高額の20億円、指定暴力団山口組ナンバー2の高山清司若頭と日産のカルロス・ゴーン元会長は15億円。保釈保証金(保釈金)の額は、罪の重さや被告人の資産状況によって決まるが、保釈率は都道府県によってかなりバラツキがあるという。

 保釈金の立て替えなど保釈に関する支援を行う「日本保釈支援協会」事務局の担当者によれば、

「保釈率は、昭和30年代後半から40年代にかけて全国で50%を超えていました。が、50年代から平成の中ごろにかけて下降の一途をたどり、平成15年には11%まで下がっています」

 そもそも刑事訴訟法では、証拠隠滅の恐れなどがなければ、裁判所は保釈請求を認めなければならないと定められている。

 昨年の保釈率を地域ごとに見てみると、

「最も高いのは奈良県の40・3%で、勾留された被告の4割が保釈を認められました。一方、一番低い栃木県は14・8%で7人に1人しか保釈されていない計算になります」(同)

 保釈率が高いのは奈良県に次ぎ京都府の36・4%、大阪府の35・7%。逆に栃木県に次いで低いのは福島県が15・7%、秋田県も17・8%と20%を切っている。ちなみに全国平均は29・4%で、東京都は31・3%だった。この数年は似たような傾向だというが、地域差があるのはなぜか。

 全国紙の司法担当記者の分析では、

「その原因は、裁判官の性格が大きいでしょう。地裁の裁判官は高裁よりも人数が多く、法律や判例の解釈も多様。つまり、保釈が認められるか否かは、裁判官個人の判断に左右されやすくなります」

 本当にそうだろうか。裁判官も宮仕えの身。数年での異動を考えると、地域差は固定化しないはずだ。

 先の支援協会の担当者がいうには、

「刑事弁護の国選弁護人と私選弁護人の割合は9対1。国選弁護人が、被告人に保釈の仕組みや保釈金の工面方法などを伝えられるかどうかが、保釈率の増減のカギを握っていると言っても過言ではありません」

 あるベテラン弁護士は、

「保釈率を左右するのは、弁護士の姿勢でしょう。保釈請求が認められても、国選なら報酬は1万円程度。それでも保釈を支援するのは、弁護士の熱意しかありません。保釈率が高い地域には、タダ働きをいとわない正義感の強い弁護士が多いのだと思います」

 テレビでCMを流しているような事務所に、そんな弁護士が何人いるのやら。

週刊新潮 2019年12月12日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。