羽生結弦がGPファイナルは2位発進 運命のフリーで逆転優勝するための秘策は?

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僅差だからこそ、ミスが命取り

 フィギュアスケート審判兼解説者の杉田秀男氏に訊いた。

「やはりコンビネーションで、セカンドジャンプを上手く跳べなかったのは大きかった。あのミスは技術点のみならず、プログラムにも影響を与えるほどでしたからね。羽生とネイサンは、他の選手よりも頭ひとつ抜け出ていますが、2人の差となると、5コンポーネンツ(演技構成点)は、ほとんど差はないと言っていいでしょう。質の良い演技をする者同士、ひとつのミスが命取りにつながるんです」

 羽生はショートプログラムで技術点は3位、逆に演技構成点では1位だった。

「コンビネーションは十数点が稼げる演技ですからね。失敗すれば、それだけ技術点に響くわけです。逆にスピンとステップでは最高評価のレベル4を獲得していますから、構成点は高くなったわけです」

 まさにジャンプが雌雄を決したわけだ。ただ気になるのは、チェンは4回転ルッツをキメているのに、羽生は17年11月のNHK杯での練習中に負傷して以降、この技を封印していることだ。同じ4回転ジャンプでも、成功した者がいないアクセルの次に難しいと言われるルッツを、フリーでは組み込まなければ、逆転優勝は無理ではないのか。

「4回転ルッツを入れていないショートプログラムでも、羽生がすべての演技を成功させていれば、ネイサンと同等、もしくはそれ以上の点数を取れていたと思います。ただ、差が開いてしまったので、フリーでは入れてくるかもしれません。前日の公式練習では、4回転ルッツも成功していたわけですから」

 そうなのだ。前日の羽生は、トーループ、ループ、サルコーの4回転ジャンプを跳び、さらに4回転ルッツもキメていた。そして現地の記者から、フリーで4回転ルッツを組み込むのか質問されると、こう答えている。

「感触はとりあえず良かった。まずはショートプログラムに集中したい」

 なぜか明言を避けていた。跳べるのに跳ばないのは、2年前の負傷が頭をよぎるなんてことがあるのだろうか。

「羽生はループでも2度、怪我をしていますが、昨年の世界選手権では冒頭から跳んでいました。彼ぐらいの実力があれば、過去の失敗など関係ないと思います。公式練習でやっていたということは、『跳べるんだぞ』という意思表示でもあります。自信もあるのでしょう。また、4回転アクセルを練習しているとは以前から言われていますが、まだ公式戦で出すようなものではないのかもしれない。それに、GPファイナルが頂上決戦のように言われていますが、彼らにとっても最終的な目標は、来年3月に開催される世界選手権です。それまではチェックポイントに過ぎません」

 だったらなおのこと、フリーでは羽生の4回転ルッツ、いや4回転アクセルを見てみたい。

週刊新潮WEB取材班

2019年12月6日掲載

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