政治家ブログの最新事情 専門家が教える“有権者の賢い読み方・使い方”

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小泉進次郎氏も翻弄されるブログ政局

 この1年ほども「ブログ発の政局」は健在だった。

 それも次第にローカル政局でも起こり始めており、先述した元祖ブロガー議員ともいえた山本一太氏は、地元の群馬県知事転出へのムードを作るため、昨年11月、自身と現職知事の支持率を探った独自の情勢調査結果をなんとブログにアップした。この時点で、地元の自民県議は山本氏の支持で固まる前のことだったが、現職知事の倍の支持率を見せつけて圧倒し、県内の「待望論」喚起を狙った。これが群馬県政界に与えた衝撃は小さくなかった。その思惑通り、知事はやがて引退し、その8か月後に山本氏は知事選で圧勝した。

 また、小泉進次郎氏の前任の環境相だった原田義昭氏が退任時の記者会見で、福島原発の処理水の海洋放出の必要性を説いて波紋を呼んだことは記憶に新しいが、自説を曲げない原田氏はさらにフェイスブックとブログにも「誰かが言わなければならない、自分はその捨て石になってもいい」と投稿。これもまたニュースの発信源となり、就任まもない小泉氏を追い討ちして翻弄した。

 一方で、有権者から見れば、当然のことながら政治家ブログは、政治的宣伝とポジショントークとマウンティングを凝縮したようなもので、読むときは注意も必要だ。政敵を攻撃しようと、事実を切り取って印象操作しようとするものも散見される。アゴラで多数の政治家ブログを取り扱う筆者も、査読の際は注意している。実際、アゴラに投稿してきた、ある政治家ブログの内容が、あまりに切り取りがひどく、注意して書き直させたこともある。もちろん、明らかに事実と異なったり、悪意を感じたりするものなどは載せない。

 とはいえ、政策の当事者、専門家である書き手が直接発信することで、新聞記者が聞きかじりの知識で書いたものより読み応えがある政治家ブログは多い(アゴラでは最近の日韓問題への関心を受けて、外務省時代に分析官だった松川るい参議院議員の記事は人気だ)。また、その政治家がきちんと仕事をしたのか検証する材料にもなるし、そこから政策論議を生むこともできる。メディア関係者も結構、取材や企画の手掛かりにしてもいる。

 N国の立花氏によるユーチューブ発信の影響で、最近は音喜多氏も動画発信を本格化するなど、政治家のネット発信は動画シフトする向きもあるが、ブログが政局やニュースの発信源として存在感を見せることはこれからも続きそうだ。

新田哲史(にった・てつじ)
アゴラ編集長。株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長。1975年、神奈川県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、読売新聞記者、PR会社を経て独立。15年に言論サイト「アゴラ」の編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックスPLUS新書)など。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年11月6日掲載

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