政治家ブログの最新事情 専門家が教える“有権者の賢い読み方・使い方”

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ママ友LINEで“待機児童”ブログ回し読み

 ただし、音喜多氏が上の世代のブログ政治家と異なるのは、前述したメディアの「伝送路」を熟知している点だ。アゴラやブロゴスなどメディアを運営する側としては、転載するに当たってニュース性も価値判断するが、ブログだと政治家本人の発信でポジショントークになることは前提とはいえ、ニュースサイトとしては転載に当たり、時事性や話題性も考慮したい。「自分語り」に終始せず、インスタの写真投稿レベルにとどまらない記事コンテンツであれば、転載されやすくなる。一度掲載されると、アゴラやブロゴスだけでなく、ヤフーニュース(アゴラは11〜18年配信)やスマートニュースなどのプラットフォームでも掲出される。

 実はそうした「伝送路」の有効性に気付いている現職政治家は、音喜多氏を含め、筆者が知る限り若手を中心に数えるほどしかいない。どういうことか。

 一つは住環境の問題だ。首都圏や大阪、名古屋、福岡といった都市部の地域ではオートロック配備の高層マンションが多く、個々の住民との関係構築が容易ではない。ただし、これらの地域はネット利用が盛んだ。ひと頃前までは「地方議員=草の根」のイメージが強かったが、都心では様変わりしている。

 筆者の住む東京・港区の区議選で連続トップ当選の清家あい氏(無所属)は、元産経新聞記者だけあり筆力は群を抜いている。待機児童や区立幼稚園入園といった問題は、まさにネットシフトした子育て世代が当事者だ。二児を育てる筆者の妻の話で偶然知ったのだが、地元の母親たちがグーグル検索で清家氏のブログを読み、区役所のホームページに載った「建前論」にとどまらない、実践的な話を参考にしている。その中身を口コミやママ友で作るLINEのグループチャットでブログを回し読みし、読んで気がつけば“支持者”になっているという構図である。

 もう一つはメディア環境の変化だ。投票に行く有権者が読むメディアといえば新聞だったが、2018年の一般紙の発行部数は約3600万と10年間で1000万部も減少(新聞協会調べ)。子育て政策の当事者である40代以下は、新聞を特に読まない。これでは、政治家にとって重要な広報ツールである、折り込みチラシを見てもらえないわけだ。

 逆に、スマートニュースのユーザーは40代と50代で過半数に達しており(※媒体資料より)、若くない世代も紙離れ、ネットシフトは着実に進んでいる。だから個人サイトにとどまらず、有名なニュースサイトで掲載されるだけのクオリティーの高い記事を書けるかどうかは、政治家のアピール力として今後もますます重要になろう。

選挙にも威力。絶大な広告効果

 そして、これはネットに熟知した政治家の「手の内」を明かすことになるが、有名サイトに載るだけのブログは、新手の「選挙広報」としても機能する。ネット選挙は解禁されたものの、実は個人候補者の選挙期間中のネット広告掲示は、まだ解禁されていない(政党や政治団体は可能)。しかし、有名サイト編集部の査読を通過し、一定以上、質のある論考やコラムスタイルの政策記事がネットニュースに載れば、個人ブログで出すだけとは比較にならない大きな「広告効果」を発揮できる。

 筆者はアゴラの仕事とは別にネット発信のコンサル業務をしているが、筆力に課題を抱えていたり、筆力があっても執筆時間が取れなかったりする政治家から、しばしば相談される。プロのライターを雇って代筆してもらい、コンスタントに発信する国会議員もいる。

 アゴラで政治家ブログの力を実感したのは2017年都議選だった。当時、都民ファーストの会にいた音喜多氏を含め、現職都議でレギュラー執筆陣は4人いた。追い風の都ファ所属の2人の当選は容易に想定していたが、逆風だった自民党、維新の都議もそれまで精力的に発信していたこともあって生き残り、4人全員が当選した。

 特に自民から再選を期した川松真一朗氏(墨田区選出)は17000票台で103票差の当選だった。川松氏は、自民党都議会議員で当時、有名ブログサイトで記事が掲載されていた唯一の候補者。テレビ朝日アナウンサー時代に培った発信力で、そのころは絶頂だった小池都政の問題点を粘り強く指摘し続け、若い自民党支持層からのネットを通じ支持を取り付けたとみられる。

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