台風19号「東京湾の死者7人」がカウントされない裏事情

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 台風19号で亡くなった人は消防庁によると90人(10月28日現在)。だが、同じく命を落としながら、カウントされない死者がいる。

 関東地方では4年ぶりとなる大雨特別警報が発令された10月12日、川崎港の沖合でパナマ船籍の貨物船「JIA DE」号(1925トン)が沈没した。その際、外国籍の男性乗組員12人のうち7人が死亡したのだ。

 事情を知る関係者いわく、

「駆け付けた海上保安庁に救助され、ミャンマー人の船長以下、ベトナム人の機関長ら4人は無事でした。亡くなったのは中国人の甲板長やコックら7人。他にもベトナム人の甲板員が、いまなお行方不明です」

 なぜ彼らは“無視”されているのか。

「神奈川県と川崎市、神奈川県警、そして第3管区海上保安本部の協議で、貨物船の沈没は台風19号の影響によるものと断定できなかったそうです。そのため当庁では被害者に算入していません」(消防庁担当者)

 船体の引き揚げが急がれるが、それにはかなりの時間を要するという。なぜか。

「4年前、川崎港内で貨物船の火災事故がありました。処理には約2年もかかり、しかも船体の撤去を巡っては、費用を立て替えた港湾業者が港湾管理者である川崎市に支払いを求めて、いまも裁判で争っているんです」(先の関係者)

 今回、引き揚げ費用は少なくとも3千万円は下らないと見られ、

「船主はもちろん、市も進行中の裁判への影響を考慮し、自ら費用負担などしないはず。となると、台風で沈んだ船も放置されたままとなるでしょう」(同)

 出港を目前に控えていたこの船にはじつに60トンを超える燃料用重油が積まれていた。その船体からは油が流出し続けている。

「横須賀の海苔養殖場付近でも油が確認されています。海苔漁は冬場が本番なので、地元の漁師からは影響を心配する声が上がっています」(横須賀市の漁協関係者)

 台風一過の影響がいま、我々の食卓にも及ぶのか。

週刊新潮 2019年11月7日号掲載

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