進次郎議員の「セクシー発言」から得た教訓(中川淳一郎)

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「セクシー発言」以後、途端にマスコミから批判的に報道されるようになってしまった小泉進次郎環境大臣。今度はあまり発言しなくなった。賢いな、と正直思います。

 私、ネット記事で同氏の選挙応援演説を5分ぶんほど書き起こしてみたんですよ。そうしたら見事に中身がなかった……。印象的なセリフを挙げます。

「政治に無関心であるということは、無関心のままでいられると思います」

 これ、環境問題について聞かれた時の「今のままではいけないと思います。だからこそ日本は今のままではいけないと思っている」に似ています。

「お腹がすいたらパンを食べましょう、だからこそ我々はパンを食べましょう」「うんこがしたくなったらトイレに行きましょう、うんこはトイレでやるのです」みたいなものですね。

 もう一つこんな発言もありました。

「来年から小学校でプログラミングが必修になります。そういう時代なんです。人工知能が出てきた。自動走行車も恐らくこれから当たり前になるでしょう」

 新聞に出ていた新しそうなことをひたすら並べたような印象がある発言です。ならばこんなことも言いそう。「FRBによる公定歩合引き下げとFTA合意にGSOMIA破棄、さらにはトルコによるシリア攻撃の時代です。キャッシュレス決済とポイント還元も有効活用しようではありませんか」

 これを演説で言われると、その場の聴衆の熱気と相まって「オー!」なんて言いたくなるのですが、文字にして冷静に見てみると「セクシー発言」同様にチンプンカンプンになってしまう。

 同氏の問題は、常に「進次郎氏」「進次郎議員」などと下の名前で呼ばれ続けてしまうことです。父親の小泉純一郎氏と区別する意図があるのでしょうが、38歳のいい年した男を下の名前で呼ぶって、どこか子供扱いしている部分があるのでは。いくら世襲議員とはいえ、「晋三首相」とか「茂議員」なんて言い方しないでしょう。後者は石破茂氏ですね。小泉氏が「進次郎議員」と呼ばれなくなった時こそ同氏が政治家としての能力を認められた時ではないでしょうか。

 今回小泉氏について書いているのは、先日イベントでご一緒した作家の山田詠美さんから「小泉進次郎について書いてよ。私に書けって言われたでもいいよ」とメールが来たからです。そこから時間が経ってしまいましたが、本稿を書く前に山田さんからは「(「女性セブン」に)とってもセクスィな悪口を書いて差し上げたことよ! おほほほほ……」というメールが来ました。

 それ以来、私は頭の中で常に「セクスィ」という英語の発音に忠実なカタカナ言葉と山田さんの顔が浮かぶようになり、他の言葉も「山田さんだったらこう書くかな」と英語発音を忠実にカタカナにする癖ができてしまいました。「ハッスル」は「ハッソォー」、「ポテト」は「ポレィロォ」、「アップル」は「エァポォー」。その度にほのぼのとした気持ちになるのですが、小泉氏も「セクスィ」と言っておけばなんだかおかしさが勝って批判は少なかったのかな、なんて思いました。英語は恥ずかしがらず大袈裟に! これが「セクシー発言」から得た教訓です。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2019年10月31日号掲載

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