「死んでくれれば楽になれる……」在宅介護の悲劇に共通する「危険な徴候」とは

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危険な徴候「不眠」

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 在宅介護に携わる人が、年老いた自らの親や配偶者に「死んでほしい」「いっそ殺してしまいたい」と感じてしまうことは少なくないという。一体何が家族間の殺人という悲劇を引き起こすきっかけとなるのか。その危険な徴候は「不眠」である。

 今年2月、まだ暗闇に包まれている大阪府岸和田市の住宅街の静寂を、パトカーのけたたましいサイレン音が引き裂いた。パトカーが滑り込んだ住宅の1階で倒れていた70代の夫は搬送先の病院で死亡。逮捕された妻は、水に濡らしたタオルと枕を夫の顔に押し付けて殺害したとされ、「十分な睡眠も取れず、介護に疲れた」と供述したという。

 あるいは、短冊飾りが日本各地で風に揺れていた今年の七夕。愛知県蒲郡市の民家で96歳の女性が自室で死亡しているのが見つかり、同居している長男の妻(70代)が殺人の疑いで逮捕された。長男の妻は「おばあちゃんの世話で眠れなくなった。首をひもで絞めた」と供述した。

 睡眠不足は人の冷静な判断能力を失わせる。警察庁によると、2013~17年の5年間で、「介護・看病疲れ」を動機とした殺人事件(未遂を含む)は計211件発生している。およそ8日に1件のペースである。「介護・看病疲れ」が原因とみられる自殺者も13~18年の6年間で1,444人にものぼる。

 内閣府によると、高齢者人口は2025年には総人口の30%となると推計されている。要介護・要支援の認定を受けた人は2019年1月末時点で約656万人(暫定値)となり、この4年間で約50万人も増えた計算だ。在宅介護に直面する家族は、これからも増加の一途をたどるとみられるが、介護を巡る悲劇がなくなる日はくるだろうか――。

デイリー新潮編集部

2019年10月25日掲載

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