29年ぶりの「即位礼正殿の儀」は“昭和スタイル”に

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 29年ぶりの即位礼正殿の儀は、皇居宮殿の「正殿松の間」にて執り行われる。宮内庁担当記者によれば、

「松の間には、向かって左手に陛下の『高御座(たかみくら)』、そして右手には雅子皇后の『御帳台(みちょうだい)』が設えられています。当日、両陛下は松の間の後方からお入りになり、それぞれ登壇なさいます」

 とのことだが、実はそこに至る“プロセス”が今回、大きく変更されている。

「そもそも昭和の時代まで、即位礼正殿の儀は京都御所の紫宸殿で行われていました。これが前回、初めて皇居宮殿で行われた。当日は出席者が中庭を取り囲む形で参列し、中庭にも『仮設ステージ』が設けられるなど、できる限り両陛下のお姿を拝見できるよう、工夫がなされていたのです」(同)

 実際に、

「松の間に向かわれるまで、両陛下は右隣の『梅の間』の前の廊下を通られ、そのお姿はステージからうかがうことができました」

 すなわち、高御座に上られる前に、参列者は新天皇のお姿を目の当たりにする機会があったというわけだ。それが今回、

「『荒天の場合を考慮して』という理由で、中庭の仮設ステージがなくなりました。代わりに参列者は中庭を挟んで松の間の正面にあたる『春秋の間』や『石橋(しゃっきょう)の間』、あるいはその右斜め前に位置する『豊明殿』などに詰め、これらの場所に置かれた大小のモニターに映し出される両陛下のお姿を拝見することになりました」(同)

 仮設ステージをなくしたことで、両陛下は梅の間前の廊下を歩かれる必要がなくなり、松の間へ入ってそのまま登壇されることになった。

「これは、京都御所で行われていたスタイルと同じ。昭和天皇の即位礼が行われた1928年以来、91年ぶりに古式を踏襲することになったわけです」(同)

 9月下旬、宮内庁の山本信一郎長官の会見では、

〈初めて陛下のお姿が現れる瞬間を、高御座に上られた後にしたいというのが、変更した本当の理由か〉

 といった質問も飛んだのだが、これに長官は、

〈それは考え過ぎ。松の間のご様子はモニターで拝見できる〉

 などと返答していた。

「当日の両陛下は朝5時には起床され、深夜まで分刻みのスケジュール。重さ十数キロといわれる十二単をお召しになる雅子さまが、松の間にお入りになる際だけでも、数十メートルの距離を歩かれるご負担が減る形になります」(同)

 さる宮内庁関係者が言う。

「前回、上皇ご夫妻が中庭の廊下を歩かれたのは、儀式を“見える化”なさりたいとの思し召しがあったからです。つまりは“例外”だったわけで、帳(とばり)が開いて参列者が初めて両陛下のお姿を目にする方が、やはり効果的だといえるでしょう」

 新時代のおとずれが目に飛び込んでくるというのだ。

週刊新潮 2019年10月24日号掲載

特集「『即位の礼』式次第には書かれない『七つの謎』」より

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