「刑事ドラマ」は絶好調でもテレ朝がそんなに喜べない理由 キーワードは「リーチ力」

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局別のリーチ力

 ではGP帯(夜7~11時)にドラマを3本放送した他3局と比較してみよう(図2)。

『偽装不倫』『ボイス 110緊急指令室』『あなたの番です』を編成した日本テレビは、各ドラマの接触率の合計はTBSと全く互角だったが、トータルリーチ力は2ポイント低い25%に留まった。

『監察医 朝顔』『TWO WEEKS』『ルパンの娘』のフジテレビは、個別ドラマとしては『監察医 朝顔』の接触率が17%とトップだった。ところが『TWO WEEKS』の7%が響き、トータルリーチは23%で、局別には3位となった。

 そして『刑事7人』『科捜研の女』『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』のテレビ朝日は、個別ドラマの接触率がそれぞれ低かった。加えてトータルリーチも15%と、他3局に大きく水をあけられてしまった。

 実は各局3ドラマの平均視聴率では、トップはテレ朝の11・23%だった。そして2位が日テレの10・9%、3位がTBSの10・23%、最下位がフジの8・8%となる。ところがトータルリーチでは、3位のTBSがトップに。そして視聴率1位のテレ朝は、トータルリーチ力では最下位に沈んでしまった。

 つまり視聴率とリーチ力との間には、正の相関関係がないことがわかる。

 テレ朝が視聴率でトップながらリーチ力で最下位となったのは、3ドラマに多様性がないためだ。『刑事7人』(水曜21時)、『科捜研の女』(木曜20時)、『サイン』(木曜21時)は、3ドラマとも事件モノでサスペンスとなっている。

 もともと同局は、週3のドラマ枠の性格を固定化してきた。水曜21時枠は東映制作の「刑事ドラマ」で、1987年春クール以降、32年続いている。木曜20時枠は「木曜ミステリー」で、1999年冬クールからの伝統だ。そして木曜21時枠の「木曜ドラマ」だけは、特にジャンルを固定化することなく、いわば自由枠となっている。

 ところが実際には刑事モノ・事件モノが制作されることが多く、この夏クールのように3本とも似たジャンルになることも珍しくない。

 理由は刑事モノ・事件モノの視聴率が安定しているからだ。物語が連続せず1話完結となるため、途中を見逃した視聴者にも見やすい。ところが、いずれのドラマも「似たり寄ったり」と、全く見ない層が存在している。これがリーチ力を下げているのである。

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