「恩赦」の意外な問題点 過去には死刑囚が減刑され、殺人未遂事件を起こした例も

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社会変化の考慮や冤罪者への救済のため

 弁護士法人・響の坂口香澄弁護士は、日本の恩赦の存在意義について次のように説明する。

「法務省は、過去の法律では犯罪とされていた行為が社会の変化によって、そこまで処罰されるべきものではないと考えが改まった場合や、冤罪が強く疑われたりする場合などの救済を、恩赦の役割として説明しています」(坂口弁護士、以下同)

 坂口弁護士は具体的な過去の事例として、以下のようなことを挙げた。

「現在は廃止されている外国人登録制度では、登録の際に指紋の押捺が強制されており、さらに指紋押捺拒否に対しては1年以下の懲役などの刑事罰が定められていました。しかし、1987年の外国人登録法の改正で刑事罰の規定は削除され、これをうけて昭和天皇の崩御に伴い行われた恩赦では、指紋押捺拒否による罪は恩赦の対象となったのです」

 また、恩赦の対象者には、基準も設けられているようだ。

「昭和天皇の崩御に伴って行われた政令恩赦では、戦時中の経済統制関係法令に違反する罪や、先ほど説明した外国人登録法に違反する罪の一部、微罪を犯した者が対象となりました。個別恩赦(特別基準恩赦)では、少年のときに罪を犯した者や、70歳以上の受刑者などについて基準が定められ、犯罪に至るまでの事情、本人の性格、日々の素行、犯罪後の状況、国民感情などを考慮し、恩赦が行われました」

 この1989年2月24日に実施された「天皇大喪恩赦」では、大赦令(大赦の命令)も発布されており、対象者は約2万8600人。道交法、軽犯罪法、外国人登録法、食糧管理法などの違反による、17の犯罪が適用対象とされたが、殺人、放火、強盗などのより凶悪性の強い犯罪は除外されている。

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