巨人「原監督」はクライマックスシリーズで2度惨敗 短期決戦の怖さを振り返る

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絵空事ではない“3度目の悪夢”

 次は14年。巨人は2位・阪神に7ゲーム差をつけてリーグ3連覇をはたし、CSも下馬評は「巨人有利」だった。だが、同年の巨人は3割打者が不在で、V決定時点のチーム打率2割5分6厘はリーグ最下位。チーム防御率こそリーグトップだったものの、この3年で最も高い3.58と、投打ともV3達成の疲弊が見え隠れしていた。

 加えて12勝を挙げた菅野智之が右肘故障でCSに間に合わない状態。広島とのファーストステージで2試合とも無失点と投手陣が安定し、ゴメス、マートンの両助っ人が上向きの阪神は、アドバンテージの1勝があっても、容易ならざる相手だった。

 その予感は的中する。第1戦、巨人はゴメスの2ランなどで初回に3点を先制され、4対8で落とすと、第2戦も沢村拓一が危険球で自滅し、2対5で連敗。5回まで2点をリードした第3戦もゴメスに2本のタイムリーを許し、2対4と逆転負け。あっという間に王手をかけられた。

 12年は中日に初戦から3連敗後、3連勝でCSを制した巨人だが、背水の陣となる第4戦の先発を大舞台経験に乏しい4年目の小山雄輝に託すしかなかったのは、荷が重すぎた。小山はマートンの先制3ランなど3被弾で2回途中6失点KO。最後の最後で菅野離脱のツケが回ってきた。

 また、シーズン144試合で113通りのオーダーを組んだパターンを踏襲し、4試合とも4番・阿部慎之助以外の打順を猫の目のように入れ替えたことも、短期決戦では裏目に出てしまった。打線がつながらず、好機に併殺打という場面を何度見せられたことか……。「いつか反撃するだろう」とファンが12年の再来を信じながら見守っているうちに、あれよ、あれよの4連敗で下克上を許す結果に。「クライマックスでは、投打のバランスでタイガースが上回っていた」という原辰徳監督のコメントがすべてを物語っていた。やはりCSはシーズンと別物だった。

 今季の巨人は、5勝1敗と開幕直後のロケットスタートに成功し、7月中旬には2位・DeNA、阪神に最大10.5ゲーム差をつける独走ぶり。その後、失速もあったが、優勝を決めた9月21日の時点で2位・DeNAに5ゲーム差をつけ、実力的に頭ひとつ抜けていた感があった。

 CSで日本シリーズ進出を争うDeNAとの対戦成績は14勝11敗、阪神は15勝10敗、とそれぞれ勝ち越している。だが、DeNAは17年のCS勝者であり、短期決戦の妙を熟知している。そして、阪神は6連勝で広島を抜き去り、大逆転でCS進出を掴んだ勢いがある。これに対して、巨人は腰痛からCSでの復帰を目指すエース・菅野が、約1ヵ月のブランクからどこまで調子を戻せるかも懸念材料だ。

 巨人にとって“3度目の悪夢”はけっして絵空事ではないのである。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月5日掲載

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