「夏ドラマ」採点 辛口コラムニストが最終回まで面白く見た2作品

エンタメ

  • ブックマーク

Advertisement

絶対ない理由3

【1】安易なリメイク
 始まる前から見る気の起きなかった「TWO WEEKS」と「サイン」、そして、見始めてはみたけれど見続ける気の失せた「ボイス」の実に3本が、今期は韓国ドラマのリメイクでした。もうイチイチ題名は挙げないけれど、この10年、15年、韓国モノの焼き直しがニッポンの民放各局の連ドラの定番になってきていて、手を染めてないのはテレ東ぐらい。

 一方、ワタシがどのリメイクものにも舌がなじまないのは、リメイクされるほどの作品はニッポンでも何らかの形で見ることができるからであり、わざわざ和風に仕立て直すことでさらによくなったリメイク版に出くわしたことがないからであり……。韓国料理なら、ニッポンのチェーン店のコリアン・フェアではなく、韓国の人がやってる個人店で堪能しますって話です。

 あ、念のため言っとくと、いま流行りの嫌韓・断韓・離韓とは何の関係もない話ッスからね。今年1~3月期に常盤貴子(47)主演で放送された、米国モノの焼き直し「THE GOOD WIFE/グッドワイフ」(TBS系・土曜・21時~)だって、見る前から眼球に拒絶反応が出てたし。

【2】事務所主導のキャスティング&制作
◆「TWO WEEKS」「ノーサイド・ゲーム」「監察医 朝顔」の主演俳優はアミューズ所属(大泉洋は提携)
◆「Heaven?」「ルパンの娘」の主演女優はホリプロ所属
◆「リーガル・ハート」「ボイス」の主演男優は研音所属

 以上の合計で7本。前クールの連ドラ総括でも引用させてもらった、デーブ・スペクターの秀逸なニッポンドラマ評は、もう長々とは引用しません。「相変わらず視聴者を無視する芸能プロダクション先行で不適切なキャスティング」というキイフレーズだけの紹介に留めます。が、公取委の皆様、「注意」の後に、今期いきなりジャニーズ主演ドラマが減った(ヒガシ[東山紀之(52)]のシリーズもの「刑事7人」1本だけ)からといって、気も手綱も緩めませんよう。

 デッカいゲーノー事務所は最近、ドラマの制作にも口や手やカネを出してきてますが、そのデッカい目的は、所属俳優の価値の最大化。これが作品の価値の最大化につながらないことは、「Heaven?」「ルパンの娘」「TWO WEEKS」の3本が、特にはっきり示してくれてますね。

 ますます“桃井かおり化”する石原さとみ(32)、“深田恭子”以外の何者にもなろうとする気配がますますない深田恭子(36)、去年何をやっていたのかが思い出せなくて不安になる三浦春馬(29)、という3人の主演作(それぞれ「Heaven?」「ルパンの娘」「TWO WEEKS」)を見ていて一番強く心に滲みたのは、彼らが役者として伝えるべき何かではなく、「ああ、事務所も今、このコたちの売り方に困ってんだなぁ」だったもん。

 なお、似たようなことは杏(33:大手ナベプロ系のトップコート所属)主演の「偽装不倫」についても言えて、結婚・出産を経た女優の連ドラ復帰作としては、日テレにせよ事務所にせよ、杏で何がしたいのがよくわからない、タイトル同様の中途半端なドラマになっちゃってたなぁ。

 妻・母になった新しい杏をうまく打ち出すわけでもなく、朝ドラ「ごちそうさん」(13~14年・NHK・8時15分~)や「花咲舞が黙ってない」(14年、15年・日テレ系・水曜・22時~)のスーッと一本、筋の通った娘っぷりを引き続きの柱とするわけでもなく、演ってる杏も困ってるかもしれないが、見てるコッチも困ってますという、芝居としてもドラマとしても楽しむのがちょっと難しい物件でした。

【3】見ずに済ませるお手軽シリーズもの
「科捜研の女」が第19弾、「刑事7人」が第5弾、そして進次郎の兄・クリステルの義兄が主演の「警視庁ゼロ係」も知らぬ間に第4弾。

 この手の「1時間モノ2時間ドラマ」は、寒天ゼリーとかルマンドとかチョコまんじゅうとか、つまりは後期高齢者の定番茶菓子みたいな存在ゆえ、いちいちウダウダ言挙げする必要もないんでしょうが、そこは悲しい元TVウォッチャーの性、新シーズンが始まるたび、ほぼ何らの期待もなしに、とりあえず初回を見ては、ほぼ何らの収穫もなしに、時間を費やして終わるという苦行を続けてます。「科捜研」に至っては今回、今年4月から来年3月まで通年で放送するゆえ、このクールはただの中間地点で、初回チェックというミッションさえ生まれない素通り……。

 いやもうホントに、たまには驚かせてくれよ、1時間モノ2時間ドラマ。さもないと、大げさなキャストの変更とか、ケンリョクに対するキツすぎるくらいの毒とか、そういう気つけ薬の使い方がうまい「相棒」(テレ朝系)との差は開くばっかりだよ。

 ただ、「科捜研」の不動の、かつ不毛な主演女優・沢口靖子(54)の名誉のために申し添えておくと、今年の初めにNHKのBSで流れて、それが今期は地上波でも放送になった「小吉の女房」(土曜・18時5分~)は、DNA解析も弾道分析も犯行再現も出てこない人情コメディの時代劇で、沢口が演じた古田新太(53)の妻・兼・幼少期の勝海舟の母は、出色の出来でした。

 さらに蛇足を重ねるのなら、「ノーサイド・ゲーム」だってTBS「日曜劇場」池井戸潤・原作シリーズの第6弾。頭にちょんまげ載っけた侍の代わりに、首からネクタイぶら下げたリーマンが、経済(&スポーツ)を舞台に勧善懲悪を繰り返す21世紀の「水戸黄門」。新作について、キャスティング以外でワタシが言えることは、「またやってるみたいですんで、お好きな方、ぜひどうぞ。まぁなんかギョーカイは、今ちょうど、ラグビーで騒いでほしいみたいですし」程度でしたね。

 以上、最終回まで見たいという意欲とは無縁に終わった12本の紹介の後に、お待たせしました、この夏クール、最後まで見る気が持続した連ドラ2本の名を、お伝えしましょう。

次ページ:ここからベスト2

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。