台風15号で大活躍の「ブルーシート」 最初はオレンジ色でブルーに変えた特別な事情

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輸入品に押されるブルーシート

――ブルーシートの開発者は誰になるのか?

萩原工業:ブルーシートは、「フラットヤーン」なしには語れません。弊社は64年に開発に成功し、73年からは一貫生産しています。「フラットヤーン」を開発した弊社が、ブルーシートを開発したと言えると思いますが……ただ、特許も申請していませんからねえ。

――それはなぜ?

萩原工業:特許を申請すると、製造工程が盗まれるリスクがあるんです。とはいえ、いま国内で出回っている多くのブルーシートは輸入品なのですが……。

――萩原工業は国内シェアトップと聞くが?

萩原工業:はい、国産シートに限って言えば、9割は弊社の製品です。しかし、それも全体の10%くらいでしょうか。韓国企業が中国で生産している製品が多いようです。先ほど申し上げた通り、70年代中頃にオレンジからブルーに変わり、定着していくわけですが、同時に輸入品が国内で出回り始め、85年には15%を占めるようになりました。95年の阪神淡路大震災では、神戸市からの要請もあり、半年間でおよそ50万枚出荷したこともあります。その頃から自治体などで備蓄の概念が出てきて、それもあって輸入品も増えました。

――国産ブルーシートと輸入物は何が違うのか。

萩原工業:質です。全く違います。皆さんでも触っていただければわかると思いますが、輸入品は平糸が直角に交わるように織られていません。隙間が多くなることで、雨水が漏れます。被災地で使われたブルーシートで、雨が漏るという問題が発生したりしますが、これはブルーシートの厚みよりも製造方法の違いが原因でしょう。2016年に鳥取で起こった震災の際、県が備蓄していたブルーシートが被災地で配られました。すると、雨水が漏ると弊社に苦情が来たのですが、確認すると輸入品でした。現在、千葉県にも出荷させていただいておりますが、それでも半分以上は輸入品だと思います。もっとも、弊社のブルーシートの価格は、輸入品の3~4倍はします。それでも長期間使用されるのでしたら、こちらをお勧めします。

――品質には圧倒的な自信があるようだ。

萩原工業:そうですね。輸入物が国内に入るようになった時には、弊社も値段を安くして対抗しようとしました。しかし、こちらが値を下げると、向こうはさらに下げてくる。とても太刀打ちできないと、品質と機能重視に切り替えました。その間に、国内のメーカーは次々となくなっていきました。

――国内トップメーカーとはいえ、常に右肩上がりで来たわけではなかった。

萩原工業:先ほども申し上げた通り、オレンジ色でデマが広がったということもありますが、70年代のオイルショックでは、原料のポリエチレンが手に入らず、商品を思うように生産できなくなったことも。現金もなくなり、ボーナスは現品支給だったと聞いています。それと様々な分野で活用していただいているブルーシートですが、まだイメージがよくないのが悩みですね。80年代には工事現場に使用されるようになり、その後は事件事故の現場隠しに使われたり、ホームレスの住宅にも……その影響もあって、花見の場所取りにも景観上よくないと使えないところも出てきています。もちろん、花見用には“和みシート”という柄付きのシートも開発しています。素材はブルーシートと同じですけど。また、“埋蔵文化財保護シート”という商品もあります。埋蔵文化財発掘現場での保湿、防水、養生、景観保護に適したシートで、土色にしているのですが、関東向けの赤土色もありますよ。

――ブルーシートは土嚢袋などにも使われる素材だが、様々に応用が利くという。

萩原工業:弊社は「フラットヤーン」という技術を大切にしています。同じ合成樹脂素材でも、通気性を持たせた製品や、遮光性、防炎性を持たせた物。透明のものもあります。ブルーシートは、安い輸入品が多くなり、使い捨てのイメージが強くなっていますが、国産は防水性も耐用年数も格段に違います。ご予算の都合もあるとおもいますが、備蓄には国産をお勧めします。

週刊新潮WEB取材班

2019年9月25日掲載

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