TBSやらせ発覚後即放送休止騒動に見る「バラエティの終焉」

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 TBS系の人気バラエティ番組「消えた天才」と「クレイジージャーニー」で相次いで制作過程での不正が発覚した。「消えた」は映像を早回しする加工を行い、「クレイジー」では、事前に準備した珍種生物を、あたかも自然に捕獲したような演出をつけて放送した。TBS関係者いわく、

「両番組とも、最近の放送回だけでなく、1、2年前からやらせ演出をしていたことが分かり、やらせが常態化していたことが局内でも問題視されています」

 この問題について怒髪衝天して息巻いたのが昨年TBSホールディングスの社長に就任した佐々木卓(たかし)氏。

「佐々木社長は就任時、社員に対して『アンフェアに勝つな』というメッセージを出した。早大ラグビー部出身の社長らしいフェアプレー精神溢れる言葉です。その想いを裏切られた今回、調査結果の公表から放送休止までで見せた迅速な対応には、社長の意思が強く反映されている」(同)

 その気持ちも理解できるが、民放バラエティに厳格な真実性を求めている人はどれだけいるだろうか。「クレイジー」によく似た探検バラエティといえば、かつてお茶の間の話題をさらった「川口浩探検隊」シリーズが思い出される。田中信夫氏のナレーションと過剰な効果音、幾度となく危険な目に遭いながらも、確実にターゲットを捕獲する、“演出効果”てんこ盛りの川口浩に視聴者は心躍らせた。

「捜したけど全く見つかりませんでした、というリアルをバラエティに求めてる人なんかいませんよ」

 とは評論家の唐沢俊一氏。

「『川口探検隊』のスタッフから昔、“人類未踏の地に棲む人喰いワニ”というナレーションを使ったけどクレームも無かったとの笑い話を聞いた。視聴者は正しさではなく、楽しさを求めている。制作側はそう思って娯楽を作っても、最近は視聴者とのキャッチボールができなくなってきたのです。クレームや検証が拡散されるSNSの登場が原因かもしれません」

 やらせが悪いのは自明の理。が、演出が必要なエンタメにも四角四面では……。「それを言っちゃあ、おしめえよ」と、寅さんの言葉がどこからともなく聞こえてくる気もするのだ。

週刊新潮 2019年9月26日号掲載

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