日韓関係は最悪、それでも日本の女子が親日の台湾ではなく「ソウル」に行く理由

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絶好のチャンスを逃した上にPR不足の台湾

 かつて日本に韓流ブームが上陸した頃、台湾のエンターテインメントは“華流”と呼ばれた。だがブームを超え、日本に定着した感のある韓流と違い、日常で華流コンテンツを目にする人は少ないだろう。

『冬のソナタ』をきっかけに次々とドラマや映画に投資してきた韓国と違い、台湾はドラマ『流星花園~花より男子~』の人気を日本で大きく展開させることができなかった。今思えば、千載一遇のチャンスを逃したといえる。

 台湾の芸能関係者によれば、

「エンターテインメントに投資する韓国と違い、台湾ではエンターテインメントによって外貨を獲得するという発想がない。だから芸能界が潤わず、人気が出たスターはすぐに中国大陸に行ってしまう。あちらで活動すれば、ギャラは台湾の10倍になるのだから」

 そう嘆く。これでは台湾のエンタメ業界が成熟するはずがない。

 台湾の映画業界も韓国に大きく水をあけられている。韓国映画といえば、今では国際映画祭でも注目され、その地位を確固たるものにしている。

 ところが台湾の映画業界といえば、

「制作中の映画でも、突然、投資家が手を引き、制作中止になることが珍しくない」

 という。

「結局、なんだかんだ言っても、中国資本に頼らざるを得ない。次々と質の高い作品を制作できる韓国映画界がうらまやしい」と映画制作会社の社員は語る。

 台北の街中で流れる音楽も、パッとしない台湾芸能界を象徴している。かつて繁華街で聞こえてきたのは、浜崎あゆみやジャニーズタレントの曲だった。

 それがいつからかK-POPに切り替わった。C-POPではなく、今も韓国のグループBTS(防弾少年団)やTWICEの曲が流れているのだ。エンターテインメントを海外に輸出するどころか、むしろ韓国に乗っ取られている気さえする。
 
 一方、台湾にも質のいいコスメはあるが、韓国コスメのようなキャッチーな言葉を使った売り方はしていない。

 そもそも日本人にとって見慣れない女優がモデルをしているのだから、観光客が手を出しづらいのは当然のこと。この点も韓流をきっかけに商品の魅力を上手に発信する韓国と違い、“メイドイン台湾”を物足りなく感じさせている。

 良くも悪くも韓国旅行には“中毒性”がある。何か一つに飽きても、別のジャンルを楽しめるのが強みだ。

 たとえ追いかけていたK-POPアイドルが兵役に行っても、現地で美味しい韓国料理を食べ、美容皮膚科で顔のシミ取りをし、買い物をして帰ってくればいい。このようにして韓国旅行のリピーターは増えていった。

 しかも今は、数年ぶりのウォン安円高が到来している。

「安近短」で行ける台湾が何か強いコンテンツを持たない限り、今後も“隠れ韓国好き”の渡航が激減するどころか、増える可能性すらあるのだ。

ライター・児玉愛子

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月7日掲載

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