専門家も驚く「焼肉きんぐ」「安楽亭」の盛衰 同じ価格帯でなぜかくも差が付くのか

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実は変わらない価格帯

 だが、実は安楽亭も、一部店舗は除くとはいえ、テーブルバイキングを実施している。そして単品メニューも、それほど価格帯に違いがあるわけでもない。「食べ放題」と「カルビ」の価格帯を表にしてみた。

 フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏は「ここまで両社の明暗が分かれるとは思っていませんでした。率直に申し上げて、驚いています」と首を傾げる。

「価格帯もコストパフォーマンスも、味わいも品質も、食後の満足度も、本来であればそれほど変わらないはずです。ところが消費者は焼肉きんぐを選び、安楽亭から足を遠ざけているのは数字に表れている通りです。不思議な現象と言わざるを得ません」

 千葉氏は「あくまでも一般論ですが」と前置きした上で、両社の明暗が分かれている理由を分析する。

「安楽亭のほうが歴史は長く、知名度も高いことは言うまでもありません。これが消費者に新鮮なイメージを失わせ、“旧態依然としたチェーン店”という思い込みを助長させているかもしれません。一方の焼肉きんぐは、最近、伸びているという目新しさがあり、消費者に『一度行ってみたい』、『また行ってみたい』と思わせることに成功している可能性があります」

 千葉氏によると、たとえ人気レストランでも歴史にあぐらをかいて経営姿勢が守りに入ると、役員も管理職も、それこそアルバイト従業員からも、活気が失われ、売上が下がるという現象は珍しくないという。

 これに対し、右肩上がりでシェアを拡大させているレストランは、アルバイト従業員も意欲的。その結果、顧客満足度は上昇するわけだ。

 もちろん安楽亭も、手をこまねいているわけではない。日本経済新聞は5月7日(電子版)、「安楽亭 店ごとの独自性を追求(埼の強み)」の記事を掲載した。

 記事は冒頭で、安楽亭が《改革に挑んでいる》とし、本社による画一的なFC経営を改め、各店舗の自主性を重視する姿勢に改めたとした。

 また、郊外型店舗を中心としていた出店戦略を見直し、都市部にも新規出店を進める考えも明らかにしている。「安い牛肉を、腹一杯食べたい」というニーズが高いのは言うまでもない。両社の競争激化は必至だろう。

週刊新潮WEB取材班

2019年8月27日掲載

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