“このままじゃ子どもを殺しちゃうから助けてください”自ら110番した双極性障害・双子の母を救った「援助希求性」

女のライフハック2019年8月13日掲載

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困ったときに助けを求める力

 こうして、地域のサポートを受けながら、育児を始めたマツコさんだったが、それでも双子育児は決して楽ではない。まだ幼い双子を連れて外出しようと思った場合に、ベビーカーは必須となるが、嫌がって泣いたりわめいたりすると、その騒がしさは通常の2倍。業を煮やして地上に降ろすと、今度は右と左に逃げ出してしまう。なので、基本的には配偶者と一緒でないと、外出は叶わなかったという。

「子どもって基本、友達といるとテンションがずっと上がり続けるじゃないですか。それがエブリナイトなんですよ。夫の夜勤の日は、ワンオペになるんだけど、怒鳴ろうが、無視しようが、ひたすらふたりに体当たりされるのが続くと、神経がやられちゃって。それで1回、警察を呼んだこともあります。110番に電話して『このままじゃ子どもを殺しちゃうから助けてください』って。そしたら、自転車でお巡りさんがふたり来てくれて、話を聞いてくれました。それで、夜勤に出てる旦那をパトカーで連れ帰ってきてくれたんです」

 自ら保健師に電話したことで、自殺を回避し、警察を呼んで虐待を未遂で終わらせる……ここまで話を聞いて気が付いたのは、マツコさんの人に助けを求める能力の高さだ。度々報道される幼児の虐待死。追い詰められた母親が起こした、悲しい事件が報じられるたびに「なぜ、誰かに助けを求めなかったのか」という声があがる。けれども、自己責任社会の中で、人に助けを求めることは、意外と難しい。なにかコツやマインドセットの仕方があるのかと尋ねてみた。

「援助希求って言葉があって、困ったときに助けを求める力ってことなんだけど、それが足りてない人は物事を深刻にしやすい。うつ病で自殺しちゃう人に足りないのはこの援助希求性だし、男性に自殺者が多いのは、援助希求性が男性の文化の中に欠如しているからっていう話を、なんかの本で読んで。誰かに相談するとか、誰かに助けを求めるとか、逆にいうと、いつも人を助けようと思ってるとか、相談に乗るっていう習慣がないと、いざっていう時にどうにもならなくなってしまう。

 自殺とか虐待死とかって『言ってくれたらよかったのに』っていうのがつきものじゃないですか。じゃあ言おうぜって。自分が他人だったらどう思うかな?っていつも考えていて、極論でいうと、子どもを殺してから電話されても困るよなって。じゃあ電話しようって、いつもそんなふうに考えてます」

「頼み事なんてできない薄い関係だから」などと躊躇せずに誰かに助けを求められること。それは援助希求ができるということで、このしんどい世の中を生き抜くために大切な能力だ。なのになぜか、多くの子育て中の母親は、人に頼ることができずに、苦しんでいる。そのことをマツコさんに伝えると、こんな答えが返ってきた。

「頑張ればできるとか、普通のことだからできるって考えている人が、きっと多いんだろうなって。私は最初から無理ゲーが重なってたから、人に頼る覚悟も出来ていたんだと思う。みんなが『こいつ、やばいぞ』って感じで助けてくれたけど、これを恥ずかしいと思わないことだよね。一番、最悪のことを起こさないために、どうしたらいいかっていつも考えてる……ごめん、なんかちょっと泣けてきちゃった」

大泉りか(おおいずみ・りか)
1977年東京生まれ。2004年『FUCK ME TENDER』(講談社刊)を上梓してデビュー。官能小説家、ラノベ作家、漫画原作者として活躍する一方で、スポーツ新聞やウェブサイトなどで、女性向けに性愛と生き方、子育て、男性向けに女心をレクチャーするコラムも多く手掛ける。『もっとモテたいあなたに 女はこんな男に惚れる』(イースト・プレス 文庫ぎんが堂)他著書多数。2017年に第1子を出産。以後育児エッセイも手掛け、2019年には育児に悩む親をテーマとしたトークイベント『親であること、毒になること』を主催。

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