山田孝之主演の「全裸監督」、モデルの「村西とおる監督」が語る山田の“役者魂”

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めげるな!オレを見ろ!

村西:わたくしは前科7犯でございますけれど、AVの世界で挑戦して、挑戦して、その結果、今があるという自負もございます。AVについては、「こんなモノは世の中にあってはいけないものだ」と取締当局が考えるのはもちろんですけれども、業界の人間までわたくしを羽交い締めにしたのです。「そんなハードな映像を撮られたら、我々の存在が許されなくなる」と。業界の人間に密告されての逮捕もあるわけです。アメリカでAV撮影をしたために、FBI に逮捕されて懲役370年を求刑されたりね、そういったところもドラマでは、実に巧みに、パワフルに、不屈の世界を描いているようなんでございますよ。わたくしも、人を喜ばせて何が悪い、という気持ちでやって参りました。こういうリスクを貫いて、こんな人間がかつて日本に生きていたんだと、しかも今でも生きてるぞと。これを見たら、皆さんが元気をもらえるのではないかと思うのでございます。特に若い方にはですね、「めげるな! 下には下がいるんだ! オレを見ろ!」と。そういうメッセージを提供できれば、わたくしの存在価値もあるのかもしれません。日本初の世界に向けたインターナショナルなコンテンツとしてですね、世界の人々にご紹介いただけるのではないでしょうか。

――ずいぶんと殊勝な言葉である。だが、大ヒットしたときにはどうなるのか。

村西:数年前にコロンビアの麻薬王をNetflixでドラマ化したら、大ヒット。コロンビアの次期大統領になるじゃないかというほど人気者になっちゃった。ですからですよ、「全裸監督」がヒットすれば、わたくしだってコロンビアの麻薬王になりかねない。次期総理なんて言われるようになったら、可哀想だけれど、あなたとだってこんな話なんかできなくなっちゃう。わたくしもホラ、富と名声を手に入れたら、ガラリと人が変わっちゃうタイプだから。これが最後の取材になるかもしれない。ただね、コロンビアの麻薬王に関しては、NetflixはSEASON4まで来て途中で放送が中止されたんです。なぜかっていうと、制作スタッフが殺されちゃった。そんなところでNetflixは果敢に挑戦しているわけです。それに引き替え日本は、テレビのコピーみたいなモノを映画館に持っていったりね、放送でもないのに何を好んでこんな眠たい映画を作っているんだろう、と思うわけです。ネットだってテレビのコピーみたいなモノばっかりですよ。金の取れる映像なんて、全く日本からは発信できなくなってしまっている。そこへもってきて、わたくしがアメリカに取られちゃったわけですよ。寂しいね、“日本の宝”がアメリカ人のものになっちゃった。

――冗談はさておき……

村西:この作品は、真に日本の映像の力を世界に問う、またとないチャンスです。まさしくキラーコンテンツ、日本に性革命を起こした、いや、世界に性革命を起こした、AVの世界です。日本人はAVを見るくせに蔑むけれど、世界は日本のこの豊穣なる性文化に憧れているのです。日本に来る外国人の中には、観光よりもアパホテルの50インチのテレビでAVを見るのを楽しみにしている人もいるんです。そして山田孝之さんは実にナイスです、素晴らしい。山田さんもね、1年後にはハリウッドに進出して、「あっ、この男、どこかで見たな。そうだ! Netflixで見たMURANISHIだ」と、世界的に活躍しているんじゃないでしょうか。

――“村西”の山田と言われてしまうのも如何なものか。

村西:そう。こういう作品に出たらイメージが悪くなって、CMやテレビの作品がなくなるかもしれないじゃないですか。実際、自己規制する俳優は多いわけです。これ以上やったらCMが来ないとか、大河(ドラマ)から声がかからなくなるとか、お客さんや視聴者からそっぽ向いたような役者ばかりですから。ですから、わたくしも訊きました。「わたくしみたいな役を演じて、将来お仕事に支障が出たらどうなさるんですか?」と。すると山田さんは、「そんなこと関係ありません。僕は作品に賭けるんです。それによって他の仕事が来なくなったら、それはそれで結構です」と。すごいよね、そんな役者がまだ日本にいたんだね。感動しましたよ。そしてこうも仰ったんです。今回の作品は、「今まで自分が演じた中で、一番自信があります」と。彼がいなければ、この作品は撮りきれなかったでしょう。そして、あの存在感は、ハリウッドを席巻することでしょう。そして、山田さんには抱かれるのは無理でも、わたくしに抱かれたいという女性が現れるかもしれない……。

週刊新潮WEB取材班

2019年8月8日掲載

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