れいわ新撰組「舩後靖彦参議院」が要望する分身ロボット“オリヒメ”とは?
8月1日、臨時国会が召集され、山本太郎氏率いる「れいわ新撰組」から初当選した、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦議員(61)と重度障害者の木村英子議員(54)が、初登院を果たした。中央玄関に仮設のスロープが用意され、本会議ではバリアフリー議席が新設された。2人には介助者が付き添い、正副議長選挙の記名投票では介助者が代筆、起立採決では介助者が挙手した。
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「重い障害がある2人は、“重度訪問介護”のサービスを受けているのですが、通勤や仕事中はこのサービスが受けられないので、当初、臨時国会に登院できないと訴えていました。しかし、参院が費用を当面負担することになって、最終的に登院を決めたそうです」(大手新聞・政治部記者)
重度訪問介護は、本人負担は最大1割だが、仕事中に受けるサービスは、本人の全額負担か雇用主の負担になるという。舩後議員や木村議員は、参院や政府に重度訪問介護の運用改善を求めているが、厚労省は改善に消極的だという。今回、参院が介護費用を負担することについては、一部には“特別扱いはおかしい”という批判の声もある。
そこで浮上してきたのが、遠隔操作で会話などができる分身ロボット・OriHime(以下、オリヒメ)である。舩後議員は、分身ロボットなどのテクノロジーを使って、自宅にいながら意思疎通できるシステムにしてほしいと要望。参院議員運営委員会の理事会では、分身ロボットを活用した議員活動の可否について、今後検討する予定である。
オリヒメは、高さ23センチ、幅は腕を畳んだ状態で約17センチ、奥行き約11センチ、重さは660グラムの上半身だけの小型のロボット。内蔵カメラ、スピーカー、マイクが装備されている。顔は、喜怒哀楽が様々に見えてくる能面を参考にデザインされているという。
「Wi-Fi環境があれば、オリヒメはどこでもインターネットで遠隔操作することができます。内蔵カメラでその場所を見ることができます。会話だけでなく、賛成の手を上げたり、手を振ったり、拍手をしたり、うなずいたり、うーんと考え込んだり、なんでやねんのポーズも。国会では、会話だけでなく、賛成の意思表示をすることができます。ボタンは、介添人が代行すればいいわけです。ボディランゲージで感情表現をすることができるため、その場に本人が居るような感覚になります」
と解説するのは、かつてオリヒメを取材したジャーナリストである。
このオリヒメを開発したのは、オリィ研究所の吉藤健太朗氏(31)。彼は2016年にフォーブス誌が選ぶ「アジアを代表する30歳以下の30人にテニスの錦織圭、体操の内村航平と並んで選ばれた、天才クリエイターである。肩書きは、ロボットコミュニケーター。オリヒメを開発したのは11年で、12年にオリィ研究所を立ち上げた。
この分身ロボットはアフターフォローを充実させるため、販売ではなくレンタルのみとなっている。契約内容によって異なるが、月3万円程度という。レンタルされたオリヒメは、現在約500台稼働しているという。
吉藤氏は、ALSの患者に出会ったことがきっかけになり、ALSの患者がオリヒメを遠隔操作するための、OriHime-eye(オリヒメアイ)を16年に開発した。これは、視線を使って入力するパソコンで、価格は45万円となる。
「ALSは進行すると手も動けず、声も出なくなりますが、目だけは動かせます。普段、家族とのコミュニケーションは、五十音が書かれた透明の文字板を用います。患者がどの文字を見ているかを見て言葉を繋いでいくのです。オリヒメアイは、それをパソコンでできるようにしました。視線を検知するセンサーが組み込まれ、視線が文字を見ると、その文字は画面の中央に寄ってきます。画面上をあちこち目を動かさなくていいので目が疲れにくくなっています。文字を1秒ほど見つめると入力されます。入力された言葉は、人工音声で変換することができ、会話ができるのです」(先のジャーナリスト)
このオリヒメアイには、挨拶の言葉や普通よく使う言葉などをフォルダに登録することが可能なので、必要に応じてフォルダを開けば、すぐに言葉を発声することができる。最初は入力に時間がかかるが、慣れてくると普通の会話についていけるほど早く入力できるようになるという。
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