大手マスコミ「世論調査」の実態 なぜ内閣支持率や政党支持率に大きな差が出るのか

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 最近の世論調査は、メディアによって、内閣支持率や政党支持率などでバラつきがあるため、「国民の声を本当に反映していないのではないか」「正確ではない」という声が少なくない。場合によっては、“数字の操作”があるのではないかという指摘さえある。

 なぜ、世論調査はメディアによって、かくも違う結果になるのか。今年6月に出版された『武器としての世論調査』(ちくま新書)を一部抜粋、再構築の上、この謎に迫る。

 著者は、2017年よりツイッターで「みらい選挙プロジェクト」を単独で運営し、独自の政治情勢分析を公表、無党派層として社会に対する発言も行う、三春充希氏だ。

 日本では、毎月1回の定例世論調査をNHK、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、共同通信、時事通信、ANN(テレビ朝日/報道ステーション)、日経新聞(テレビ東京と合同)、産経新聞(FNNと合同)、JNN(TBS)、NNN(日本テレビ)と、計11のメディアが個別に行っている。

 調査方法は、時事通信だけが個別面接形式で、調査員が対象者に出向いて質問し、回答を得る。複雑な質問が可能なので、意図が誤解されることが少ない。残りの10社は電話形式で、これは90年代前半に普及した調査方法だ。初期は電話帳や住民基本台帳をもとに電話をしていたが、00年以降は、ランダムな数字を組み合わせて電話番号を作り、それが実際に使われているかを判定後に電話をかける方法が採用された。

 各社とも、調査対象者は1000人程度かそれ以上。1000人を調査すると、想定最大誤差が±3・1ポイントに収まるからだ。しかし実際に発表されている各社の内閣支持率は、それを大きく超えたばらつきがあるという。

 安倍政権下で、最も多くの世論調査が同一の日程で実施されたことがあった。15年9月19日に安保法(安全保障関連法)が強行採決されたときに行われた調査だ。内閣支持率は最も低い朝日と毎日が35%、最も高いJNNが46・3%となっており、その差は10ポイントを超えたという。

 その原因を三春氏は著書の中でこう分析している。

〈実は偏りが生まれる最大の原因は、各社の内閣支持率の定義に違いがあることなのです。(中略)各社の内閣支持率の定義に違いがあるとはどういうことでしょうか。例えば朝日新聞は、世論調査の最初の質問で「あなたは安倍内閣を支持しますか。支持しませんか」と聞いています。それに答えて「支持する」を選んだ分が内閣支持率とされ、「支持しない」を選んだ分が不支持率とされます。日経新聞でも、最初の質問で「あなたは安倍内閣を支持しますか、しませんか」と聞いて「支持する」「支持しない」の回答を集めます。しかし日経はそこでは終わりません。「いえない・わからない」とした人に対して、「お気持ちに近いのはどちらですか」と回答を促し、あらためて「支持する」か「支持しない」かを選んでもらうのです。このような質問の仕方を重ね聞きと言って、態度を表明しない層を減らす効果を持っています〉

 この重ね聞きの結果、日経の内閣支持率は40%と朝日より5ポイント高くなった。

〈JNNは4択で聞き、「非常に支持できる」と「ある程度支持できる」の合計を内閣支持率に、「あまり支持できない」と「全く支持できない」の合計を不支持率とします。この方式だと態度を表明しない層が極めて少なくなるため、内閣支持率も不支持率も他社より高くなりがちです〉

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