黒木華「凪のお暇」が絶賛される理由 悩み多き現代人の心を突く“哲学的ドラマ”

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 黒木華(29)が主演しているTBSの連続ドラマ「凪のお暇」(金曜午後10時)の評判が抜群にいい。女性に人気の高橋一生(38)、中村倫也(32)が出演していることもあり、女性向け作品と誤解している向きもあるが、男性が見ても共感できるはず。悩み多き現代人の胸を突く。

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 現実味のないトレンディードラマが大流行したのはバブル期の1990年前後。あれから約30年、ようやくドラマ界はリアリスティックな「凪のお暇」に辿り着いた。

 主人公・大島凪(黒木華)はごく平凡な女性。「主人公は等身大の女性」と喧伝しながら、視聴者の期待を裏切ってきた凡百のドラマとは違う。これまでドラマ製作者たちは「等身大」という言葉の意味を誤解していたか、あるいは知らなかったのではないか。

 凪はというと、28歳のOLで、おとなしく、地味。中学や高校のクラスに1人以上は必ずいたタイプだ。いつも場の空気を読もうと懸命だが、それは周囲から嫌われたくないから。こんな人も男女問わず珍しくないだろう。

 同僚OLたちと会話するときの凪のも口癖は「わかるー」。本当はわかっていないのだが、共鳴した振りをしないと、あとからディスられてしまう。同調圧力に逆らわないところは大多数の現代人と同じはずだ。

 とはいえ、凪は本当の自分を隠しているので、毎日が息苦しかった。これも多くの現代人と一緒であるはず。唯一の救いは営業部のエース・我聞慎二(高橋一生)との秘かな交際。でも、慎二の意向で2人の関係は一切伏せており、それが不満だった。本当は結婚したいのだ。

 慎二は凪とは対照的に、「空気は自分でつくるもの」と豪語。傍から見ると、イケイケのやり手だ。もっとも、やがて慎二も本当は凪と同じく等身大の男性であることが分かってくる。

 凪は周囲に気を遣うことにより、何とか平穏に過ごしていた。いや、そう思い込んでいた。ところが、ある日、同僚のOLたちが、自分をうまく利用していることを知り、愕然とする。

 追い打ちをかけるように、慎二が自分のことを「アッチ(身体の関係)がいいから会っているだけ」と周囲にうそぶいているのを耳にして、衝撃のあまり過呼吸で倒れてしまう。

 一番堪えたのは倒れたあとのことだった。誰からも心配するメールやメッセージが届かなかった。一通だけメッセージが届いたので急いでスマホを開くと、薬局のPR……。

 こういった設定、展開に「リアリティが足りない」と言える人がどれだけいるだろう?

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