冷夏の年はパ・リーグに異変が起きる!?

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 関東地方もようやく梅雨が明け、連日の猛暑となっているが、6~7月は記録的な冷夏となった。6月29日にプール開きをした遊園地「としまえん」の7月15日までの来場者は、前年同期より95%も落ち込み、東京都心は同月16日まで、20日間連続で「日照時間が3時間未満」となり、秋以降の農作物への影響が懸念されている。

 とはいえ8月に入り、プロ野球ペナントもはや後半戦に突入している。令和最初の戦いぶりを見てみると、セ・リーグは昨年の覇者・広島が20季ぶりの11連敗などで失速し、巨人が2位DeNA以下を引き離し、首位を独走しそうな気配。パ・リーグに目を転じてみると、その豊富な選手層から、手堅く首位を独走するだろうと思われていたソフトバンクが、後半戦に入ってまさかの3年振り6連敗。2位日本ハムの躍進もありゲーム差はひっ迫。しかも、4位までは順位が常に変動し、まさに「混パ」となっている(7月31日現在)。

 主砲・柳田の長期離脱に加え、守護神・サファテの今季復活が絶望的となったソフトバンクだが、今年は「福岡移転30周年」の節目の年でもある。本拠地ヤフオクドームの大幅改修や、売店・チケット売り場などにPayPayを導入、さらには市制施行130周年とも重なった福岡市役所庁舎に、巨大なユニフォームを展示(3月)するなど、官民を挙げた応援態勢で「令和初のチャンピオン」を心待ちにしているのだ。

 ところで、ソフトバンクの前身、ダイエーホークスの親会社・ダイエーが、南海ホークスを買収して福岡への移転を決めたのは、1988(昭和63)年である。昭和最後の夏となったこの年は、令和元年の今年に抜かれるまで「都心の日照時間が3時間未満、連続17日」を記録した、冷夏の年でもあった。

 山室寛之著『1988年のパ・リーグ』(新潮社)によると、7月の日照時間の合計は62時間弱。8月は18日間も雨が降り、江の島の海水浴客は半分以下。9月も雨が降り続き、雨の降らない日は2日間だったという。9月中旬以降は昭和天皇のご容態が心配され、未公開株譲渡が問題となったリクルート事件の捜査が本格化する中、プロ野球、それもパ・リーグに大きな激震が走ったのをご記憶だろうか。南海ホークスがダイエーへ、阪急ブレーブスがオリックスへと、パを代表する名門2球団の相次ぐ身売りが表面化し、ファンが騒然となった、あの「パの大激動」である。ダイエー社長の中内功が抱いたプロ野球への執念は凄まじいものだった。

「中内は、試合結果を新聞、テレビが大きく伝えるプロ野球の膨大な影響力と集客力に15年前から着目し、参入へ動き出して8年が過ぎていた」(同書より)

 さらに同書では、阪急買収を進めたオリックスと、取引先銀行の特命チームによる水面下の動きや、その特ダネを追いかけたマスコミとの攻防などが詳しく書かれているが、1988年といえば忘れられないのが、ロッテVS近鉄による「10・19」だろう。

「(球審の)前川は秋に入って、全盛期の西武を懸命に追う近鉄の戦いぶりに感嘆していた。『できれば近鉄に勝たせたい』と内心で思った。判定と無関係な感情である。しかし、最終戦の近鉄の戦いぶりには審判として厳しかった」(同書より)

 ところで気になるのは、「昭和最後のペナント」となった1988年と同じく冷夏となった「令和最初のペナント」は、優勝争いだけでなく、グラウンドの内外でパ・リーグに何か大きな異変が起きるのだろうか、ということである。

 最後に同書から、買収問題で揺れていた当時の中内功の台詞を引いておこう。

「先のことは、明日の天気と同じく分からないものだよ」

デイリー新潮編集部

2019年8月1日掲載

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