「Heaven?」「凪のお暇」「ルパンの娘」……今期ドラマに見る、居場所のない男性たちのプレッシャーと孤独

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

冴えない男性たちは、ヒロインの活躍のスパイスか? ヒーロー予備軍か?

 そうはいってもどのドラマも、主人公は女性であり、それぞれの道でたくましく生きようとする戦いや再生、自立の物語が主軸である。今回挙げた3作品は、恋愛という要素は絡みながらも、仕事や自分の居場所に葛藤する女性という仕事系の話でくくることもできる。

 かつてヒロインの周りを固める「迷い苦しむ冴えない男性」たちは、ヒロインの能力を際立たせるだけの脇役であったり、辛い状況を強調するためだけの負け犬だったり、やっつけるべき薄汚れた権力の象徴であったりと、物語のスパイス的役割が求められていた。ただ令和の時代に入って感じるのは、前クールの「わたし、定時で帰ります。」や、その前の「獣になれない私たち」しかり、ヒロインを描きながらも、その裏にある男性の孤独やプレッシャーへの眼差しも増えてきたのではないかということだ。居場所のない孤独や、ここは自分のいる場所ではないという違和感は、男女に差はない。ヒロインの活躍や成長を引き立てるためだけのポジションではなく、悩める男性の救済がどこまで描かれるかが、ヒット作になるかどうかの分かれ目になるのではないだろうか。

 全くの余談だが、今年公開された洋画で個人的に好きだったのは、どれも悩み苦しむオジさんが孤軍奮闘するものばかりである。「ビューティフル・ボーイ」「スノー・ロワイヤル」「シンク・オア・スイム」……なんとなくだが、世界的にも「男性の時代」が来ている予感がする。それはマッチョイズムや男尊女卑という意味ではなく、男性も女性と同じように「つらい」「助けてほしい」「もっと愛したいし愛されたい」と素直に声を上げられる時代が来たということなのではないか。今期ドラマで大暴れするまばゆいヒロインたちの陰にいる、男性たちの孤独やプレッシャーが少しでも報われることを祈りながら、各ドラマのゆくえを見守りたい。

(冨士海ネコ)

2019年7月28日掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。