かんぽ生命「高齢者狙い」悪質手口とその裏にはびこる「住友イズム」

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住友イズム

 ところで、過大なノルマを課すことで知られた金融機関といえば、民営化と同時に日本郵政の初代社長になった西川善文氏や、その懐刀として専務執行役を務めた、日本郵便の横山邦男現社長の古巣、住友銀行が思い出されないだろうか。

「住友イズムとは1970~80年代、磯田一郎氏の指揮下で確立した収益至上主義。その苛烈な営業方針のもと、住銀は関西系都銀ながら利益トップの座を不動のものとしました。一方、かつての郵便局は地域と密着し、競争とは無縁でしたが、民営化を機にバリバリの住友イズムを背負ったトップが君臨し、“売れ売れ”と号令をかけるようになった。結果、よくわからないままノルマに突っ走った先の悲劇ではないでしょうか」

 こう話すのは、金融業界に詳しい元日経新聞記者の大塚将司氏である。それを象徴すると思しきが、

「08年にできた営業力養成センター。現場に配属される前に入れられ、インストラクターから、不正すれすれの営業方法を教わるのです」(前出の内勤局員)

 住友イズムの風を吹かせてきた横山社長は、責任をとらないのか。郵政産業労働者ユニオン中央執行副委員長の家門和宏氏が指摘する。

「横山氏は、現場が大反対だったゆうパックとペリカン便の統合を強引に推し進め、1千億円近い赤字を作った。その際の検証委員会が“下の声が上に伝わっていなかった。風通しが悪い職場は変えなければいけない”と警鐘を鳴らしたのに、今回も横山氏は、社内で行われていた不正な営業について、本当に知らなかったと思われます。だれも上にモノを言えないのが組織の現状なのです」

 補えば、横山氏は09年に三井住友銀に戻ったが、16年に“営業力”を買われて復帰した。その横山社長は、

「大変重く受け止めています。営業実績を重視するあまり、お客様本位の営業が実践できていなかった」

 としたうえで、

「抜本的な改革を図り、真のお客様本位を貫くことを徹底し、地域と共生できる郵便局であり続けられるように、全職員一丸となって信頼回復に取り組みます」

 と語ったが、どこか他人事で、自身の責任にはまったく触れず仕舞い。集団詐欺の温床を作りながら、責任を現場に押しつけて済む話ではない。会見でのご自身の表情の何倍も憮然とした顔が、おそらく何百万人分も、貴殿に向けられているのである。

週刊新潮 2019年7月25日号掲載

特集「まるで『集団詐欺』! あなたの保険は大丈夫か!? お役所仕事の『かんぽ生命』をノルマ地獄に変えた『住友イズム』」より

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