「テスラの車でなかったら、夫は死なずに済んだかもしれない」 自動運転車の暴走リスク

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法整備も道半ば

 確かに、「自動運転」という言葉には魅力的な響きがあるが、現実的には法整備も道半ばの状態だ。

 国土交通省の「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」の委員を務める、古笛恵子弁護士は、

「今年5月の衆院本会議で、道交法と道路運送車両法の改正案が可決されました。これはレベル3の自動車が公道を走るための法整備と捉えられています。しかし、コンピューターのプログラムには限界がある。レベル3を含めて、当面はあらゆる自動車事故の責任が“運転者”に科されることに変わりありません」

 悩ましいのは「保険」も同じ。日本損害保険協会の広報担当者によると、

「現在、公道を走っている自動車はレベル2以下に限られるので損害賠償責任はドライバーにあります。そのため、基本的には通常の自動車保険と同様に処理される。ただ、今後は事故の原因にシステムの不具合やサイバー攻撃などが絡んで、責任の所在を確定しづらいケースも想定できます」

 今回の事故でも通常の賠償金が支払われるが、刑事訴訟の終了の見込みも立っておらず、遺族はまだ受け取っていない。

 先の古笛弁護士はこう付け加える。

「今回の裁判における弁護側の主張は、医療事故を疑われた医師が、“手術をしなくても患者は亡くなっていた”と主張するのと同じです。とはいえ、ドライバーが居眠りせず、事故前に減速したり、ハンドルを切っていれば、被害者の命は助かったかもしれない。弁護側が“全く避けようのない事故”だったと証明するのは至難の業だと思います」

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