巨人、広島3連敗で思い出す原監督の苦い経験【柴田勲のセブンアイズ】

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 今後、セ戦線に大きな影響を与える可能性がある巨人の広島3連敗だ。

 18日段階では2位・DeNAに10ゲーム、5位・広島には12ゲームの差をつけていたが、この3連敗でゲーム差はそれぞれ7、9となった。22日現在で50勝35敗1分だ。

 もうすぐ8月の声も聞こえる。この時期、10ゲーム差ともなると、下位にいるチームの監督は試合前のミーティングで決まってこう話す。

「ゲーム差は関係ない。お客さんがこれだけ見に来てくれているんだ。みんなでお客さんが満足してくれるゲームをやろうじゃないか」

 ところが、今回のように状況が一変すると、話す内容も一変する。

「なんとかなるぞ。いける。みんなで頑張ろう」

 私も長いことやってきたから分かるが、要約するとこんな感じになるんだ。

 それほど巨人にとってはイヤな3連敗だった。初戦をエース・菅野智之で落としたのが躓きの始まりだった。やっぱり菅野、本調子ではない。六回で諦めるのかと思ったら、引っ張って、結局は七回途中で降板した。2死から3イニング続けて失点していた。試合の流れを広島に渡して、八回にはスコット・マシソンが会沢翼に決勝弾を浴びた。

 第2戦はサビエル・バティスタに2ラン2連発で敗れ、第3戦は延長十回にこれまたマシソンが鈴木誠也にサヨナラ打を喫した。

 振り返るとマシソンで始まり、マシソンで終わった3連敗だった。

 鬼門(注1)、再びといったところか。マツダでの開幕戦を勝ち越して、苦手意識はそれなりに消えたかと思ったが、どうも試合を見ていると、回が進むにつれて少しずつ広島に有利な展開になっていく。1点差で2試合、2点差で1試合と途中まで互角の戦いをしながら、最後は寄り切られる。鬼門たるゆえんだろう。

 原辰徳監督には苦い経験がある。第2次政権の1年目だった06年に開幕から快進撃を続けて貯金は14まで伸びたが、その後、阿部慎之助、高橋由伸、上原浩治ら主力にケガ人が続出して最終的には借金14で4位だった。

 その一方で08年には7月の段階で阪神に13ゲーム差を付けられたものの、9月に12連勝するなどして大逆転Vを達成した。

 原監督、勝負事の怖さを知っている。なにか1つのきっかけで歯車が大きく狂えば、大きく好転することもある。確かにイヤな3連敗だが、他の4球団には勝ち越している。だからこそ、原監督は多くを語らなかった。3連敗を良薬にして23日からのヤクルト戦での仕切り直しを図っているのだろう。

 幸い、今年の菅野は本調子ではないが、山口俊がカバーし、桜井俊貴のようなイキのいい投手が台頭してきた。先発陣はそろっている。新外国人のルビー・デラロサがマシソンの代役を務めることもできそうだ。中継ぎ陣は以前と比べて充実している。野手では坂本勇人に新加入の丸佳浩が“仕事人”ぶりを発揮している。ベテランの亀井善行が健在、大城卓三、若林晃弘、重信慎之介、増田大輝ら若手が毎試合のようにアピールしている。

 昨年とは違う。これから他球団の追い上げはあるだろうが、しっかり首位の座を守りきってもらいたい。

 来月8月12日から鬼門・マツダでの3連戦が組まれている。注目のカードになるだろう。今度こそ突破すると信じている。

 〈注1〉巨人は昨年までの3年間、マツダで11勝25敗1分。今季も2勝6敗1分で対広島戦は4勝9敗1分で唯一負け越している。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月23日掲載

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