「幸せにやせたい人」はどうするべきか 摂食障害の専門家が教える“唯一の方法”

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 アマゾンの本の売れ筋ランキング上位に必ず入っているのが、ダイエット関連本である。

 本だけでなく、雑誌やテレビでも、頻繁にダイエット特集が組まれている。そこには常に“楽して”、“今度こそ”という文字が躍っているが……。

「アメリカやヨーロッパの街を歩いていると、自分が肥っていると感じたことはありませんが、日本にいると、肥っているじゃないかと思うことがよくあります。足が細くてすらーっとした女性をよく見かけるからです。骨盤が小さくて、妊娠したら、どうやって赤ちゃんを出すんだろうって(笑)」

 そう話すのは、元衆議院議員で摂食障害の専門家である精神科医の水島広子氏である。この7月に、ダイエットに疲れた、心が傷ついた人のために、幸せにやせる方法を紐解いた心の処方箋、『「幸せにやせたい人」の心の教科書』を出版。改めて話をきいた。

「ヨーロッパでは、ダイエットは摂食障害を増やすという理由から、やせすぎモデルを規制する動きが以前から進んでいます。ところが日本のメディアはかなり無頓着です。やせすぎと思われるタレントがテレビで“やせたい”と発言しています。アメリカで学歴のある人は、やせたいという話などしませんが、日本では、やせているのが美しい、という価値観が未だに根強く残っています。一種の洗脳状態といってもおかしくはありません」

 そのため、やせていないと評価されない、と思い込む女性が増えているという。水島氏の本には、こんなケースが紹介されている。

〈大学生のヒトミさんは、「やせなければ」と思うことがクセになっています。モデルのような身体になれたら、もっとオープンな人間になって、いろいろなことに前向きに取り組めるようになるだろうと思うからです。(中略)ダイエットの反動で、普段我慢している甘いものなどを食べることもありますが、じつは「おいしくて幸せだから」食べたいというわけではないのです。むしろやけ食いです。(中略)今までダイエット食品やエステなどさまざまなものを試しましたが、いずれも効果はあまり出ませんでした。また決して安いものではないため、今でもそのローンの支払いは続いていますが、新しいものを見ると「今度こそ」と手を出してしまう始末。今のヒトミさんは、まさにダイエットのためにアルバイトをしている状態です〉

「ヒトミさんのように、ダイエットを行うためにアルバイトをしなければならなくなると、生活の質が落ちていきます。ダイエットに人生が乗っ取られてしまった状況ですね」

 こんな例もある。

〈大手出版社の編集者であるフタバさんは、三〇代前半のワーキングウーマン。仕事もでき、スタイルのよい美人で、ブランド物のスーツがよく似合います。とはいえ、決して楽をしてそのスタイルを維持しているわけではありません。間食はせず、昼はサラダを軽く食べるだけで、食べすぎないようにつねに気をつけています。ダイエット食品のチェックはぬかりなく、サプリメントは各種摂取し、朝は必ずジムへ。(中略)職業柄、接待もありますが、食べ物はなるべく口にせず、頻繁ではないものの中座して口の中のものを吐き出すこともあります。(中略)接待相手と別れるや否や、夜中でもランニングへ〉

「フタバさんは、体調の悪い時でも夜中に必死でランニングしています。こんなにも努力して体型維持している彼女のスタイルが、幸せな人生に直結していればいいのですが、そうとも限りません。私の患者の中には、やせるために一日5時間以上歩くという人もいます。歩くのを止めるのが怖いんだそうです。やせたいという強迫観念にとらわれてしまっているわけですね。これでは、幸せにやせたい人とは程遠いといえるでしょう」

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