梅雨まっただ中!コンビニ「ビニール傘」最新事情 大きく、黒く、そしてシェア…

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 24時間営業問題のイメージダウンの折も折に、長引く梅雨で客足ダウン……。例年以上の売上げ苦戦が伝えられるコンビニエンスストア。急に雨が降った時にはビニール傘という“ドル箱”があったが、実はそちらも風雲急を告げる展開となっている。『コンビニの傘はなぜ大きくなったのか』の著者で、流通アナリストの渡辺広明氏に話を聞いた。ビニール傘の進化の過程から「シェア傘」まで、意外だらけの“パラソルワールド”をご紹介する。

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 日本洋傘振興協会によると、日本国内で1年間に消費される傘は推計で1億2~3千本と、ほぼ総人口と同じ。このうちビニール傘が何%を占めるかについては統計を取っていないそうだが、業界関係者によると「コンビニだけで推計で6000万本が売れている」と言われている。

 流通アナリストの渡辺広明氏はこう解説する。

「夕方の帰宅ラッシュのタイミングでゲリラ豪雨が来た場合など、駅前立地店舗では10分で30本のビニール傘が売れることもざらです。さらに店舗利益が50%を超える高利益商品でもあることから、極力在庫を抱えないコンビニが、珍しく多くの在庫を確保しています。立地にもよりますが、店頭に陳列したビニール傘とは別に、1店舗あたり50~100本を段ボールに入った状態で保管しています。食品と違って在庫廃棄リスクもありませんからね」

 消費者にとっては、その場しのぎのイメージが強いビニール傘だが、時代に合わせて進化を遂げている。

 もっとも分かりやすいのが大型化だ。かつては親骨の長さ50センチ台も珍しくなかったが、現在コンビニで販売されているビニール傘は60センチ超が主流で、ファミリーマートとローソンでは70センチまでラインナップされている。

「これはパソコンやタブレットなど精密機器を持ち歩くビジネスパーソンが増えたことに対応するためです。また、ビニール傘の90%を製造する中国国内の人件費高騰と原材料費のコストアップに関連しています。単純に価格を上げるだけではお客様離れを招くから、大型化させつつ販売価格も上げるという方針が採られてきました」(渡辺氏)

 あえて複数のサイズのビニール傘を販売している理由も興味深い。

「とりあえずの雨をしのげればいいという緊急購買をする方が多いので当然、安価で小さなサイズから先に売れていきます。ただし、小さなサイズが売り切れれば今度は、『これしかないなら仕方がない…』と大きいサイズのビニール傘を購入するお客様が出てくるという流れで、結果的に両方が売れるのです」

 また、昔は「ハンドル」と呼ばれる持ち手や「石突き」と呼ばれる先端部まですべて白で統一されている傘が多かったが、最近では黒いハンドルが増えたことにも意外なワケがあった。

「もともとコンビニ向けでは白しか製造してなかったが、プラスチック価格が高騰した際にコストダウンをはかるためにプラスチックに樹脂を混ぜ込んだところ、白色を維持するのが難しく、着色して黒にせざるをえなかった」とは、ビニール傘の輸入を手がける業界関係者の弁だ。

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