日本に追い詰められた韓国 米国に泣きつくも「中国と手を切れ」と一喝

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2019年7月16日掲載

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「選ぶ時が来た」とアメリカの声

 国務省も結構しつこいなあ、と感心したのは、自身が運営する放送局、VOA(アメリカの声)を通じて「インド太平洋戦略」への参加を強要し始めたことです。

 VOAは7月13日に「米国、韓国の域内での役割を強調…専門家、『結局、韓国は二者択一するだろう』」(韓国語版、一部は英語)という記事を載せたのです。

 見出しから分かる通り、「いつまでも米中の間で二股をかけようとするな」との、韓国に対する叱責です。見出しの「専門家」の1人は韓国研究者として著名な、外交問題評議会(CFR)のスナイダー(Scott Snyder)シニア・フェロー。そのコメントを訳します。

・韓国は伝統的に米中の間での選択を回避するという戦略をとってきた。しかし、この地域での共同プロジェクトに韓国政府が米国とともに可能な限り関与するよう、米政府は強く望むようになった。
・米中対立の激化により、韓国はいくつかの点で選択をせざるを得ない。今後も多くの選択を迫られるだろう。米中は韓国に圧力をかけ続けているのだ。

 つまり「どっちの味方か早く決めろ」と急かせたのです。

戦場は「海」から「5G」へ

――米国はなぜ、急かせ始めたのでしょうか?

鈴置: そこがポイントです。スナイダー氏が挙げたように「米中対立の激化」が原因であるのは間違いありません。より厳密に言えば、「中国封じ込め」の舞台が「海洋」から「技術」に広がったからだと思います。

 中国の海洋進出を阻止するため、日本は東シナ海や南シナ海での活動強化を米国から求められています。しかし海軍力の脆弱な韓国は米国から期待されません。だから、2017年に交わしたトランプ大統領との約束を文在寅大統領が即刻、破っても明確な「おとがめ」はなかった。

 しかし今や、米中の戦場は「5G」――次世代通信規格です。通信の速度と容量が飛躍的に拡大する5Gは、民生部門だけではなく軍事的にも国の死活を左右します。

 画像をより素早く解析し、より素早く次の行動を決めるのを可能にする5Gは車の自動運転に欠かせません。同時に、高速で動く標的を狙うミサイルの命中度を一気に引き上げます。

 5Gを可能にする通信システム、ことに半導体分野では米国、中国の企業と並び、サムスン電子を中心とした韓国企業が進んでいます。中国は韓国を取り込もうとし、米国は高水準の技術を中国に渡さないよう韓国に求めています。

 自分の国の企業がそれほどの技術を持たないので、日本は幸か不幸か「板挟み」にならない。そして通信や半導体の分野で米中がいかにしのぎを削っているかにさえ気づかない日本人が多いのです。

サムスンに増設を強要する中国

――米国のファーウェイ(華為技術)潰しも「5G」を巡る米中の戦いですね。

鈴置: その通りです。トランプ政権は世界に向け「ファーウェイの基地局や携帯を使うな。情報を盗まれるぞ」と訴えています。同時に、「ファーウェイに中核部品を売るな」とも言っていました。

 ファーウェイが中国の5Gの旗手だからです。6月29日の大阪での米中首脳会談で「ファーウェイ潰し」がいったん棚上げされたかに見えますが、米中が和解すると見る専門家は少ない。

 韓国では日本以上にこの問題が大きく報じられています。ファーウェイに売る半導体の量は日本企業とは比べものにならないほど多い。米国の「ファーウェイ潰し」においそれと参加できません。

 中国も韓国が米国側に回れば大いに困ります。6月27日の中韓首脳会談の議題は「5G」と「THAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)」でした。

 在韓米軍のTHAADは中国が韓国を脅す時に使ってきたカードです。配備の際には、土地を提供したロッテグループが中国で徹底的にいじめられました。習近平主席は「5G」で言うことを聞かないと「THAAD」の時のように報復するぞ、と脅したわけです。

 それに対し、文在寅大統領は「韓国が米中のどちらかを選択する状況に陥らないよう望む」と述べました。「これ以上、いじめないで」との悲鳴です。

 面白いニュースがありました。ロイター・日本語版の「サムスン電子、中国NAND工場の追加投資未定 報道を否定」(5月18日)です。

「サムスン電子が陝西省西安の工場でNAND型フラッシュメモリーを増産するため、140億ドルの新規投資に踏み切る」と5月17日に新華社が報じた。すると即、サムスン電子が否定した、という内容です。

 新華社が記事を流すことで、中国政府はサムスン電子に中国工場の能力増強を迫った。米国の顔色も見なければならないサムスン電子はあわてて報道を打ち消した――と読めます。

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