日テレ「イッテQ」にBPOのお咎めなし、ならばフジ「ほこ×たて」はどうなの?

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「ほこ×たて」と何が違うのか?

〈重大な倫理違反〉第1号と言えば、やはりヤラセを問われたバラエティ番組「ほこ×たて」(フジテレビ)である。タカアンドトシの司会で、“矛盾”の故事にちなみ、「絶対に穴の開かない金属」と「どんな金属にも穴を開けられるドリル」を対決させるなどして、人気となった真剣勝負バラエティだ。

 ところが、13年10月20日に放送された「どんな物でも捕えるスナイパーVS絶対に捕えられないラジコン」という企画で、出演者から真剣勝負ではなかったという指摘がインターネットでなされて発覚したものだ。

「『ほこ×たて』では『ない対決を、ある』としたことが〈重大な放送倫理違反〉に当たるとされました。『イッテQ』と同じはずですよ。しかも、あの時は〈フジテレビの放送局としての存在感の希薄さ〉が問題とされました。『ほこ×たて』も制作会社が作った番組でしたが、BPOはフジが丸投げしていたことも断罪したのです」(前出・碓井教授)

 具体的には14年4月1日に公表された〈フジテレビ『ほこ×たて』 「ラジコンカー対決」に関する意見〉で、「結論」の最後にこう記している。〈局の制作会社への丸投げや、その結果生じた番組の基本コンセプトについても合意形成の不在と、局内チェックの実効性低下にも、この放送倫理違反をもたらした深刻な問題があったと考える。〉

 ちなみにフジは、BPOの意見を待つことなく、ヤラセの指摘を受けた翌11月には、番組打ち切りを決定。社長が謝罪し、取締役を減俸、編成制作局編成部長、バラエティー制作部長、チーフプロデューサーを減給すると発表した。

 同じような事例にもかかわらず、どうしてこうも結論が違うのだろうか。BPOはいつから日テレ応援団になったのだろう。

「そう思われても仕方がないほど、『イッテQ』の意見書の内容は、ヤラセが報じられたときに日テレが出した弁解と似ています。そもそもBPOは、放送が言論と表現の自由を確保しつつ、為政者にコントロールされないように、自浄作用を促すために作った団体であり、なくてはならないものです。初代委員長を務めた川端和治さんはじめ、是枝裕和監督など以前のBPOの放送倫理検証委員は、そう思われないために、非常に厳格な審議をしていました。しかし視聴者に、BPOってNHKと民放で作った身内に優しい団体なのね、と思われてしまったら、存在意義が問われかねません。心配ですね」(同・碓井教授)

 ここまで甘ければ、日テレだって本当に反省しているのか疑わしくもなる。業界内では、さっそく「イッテQ」にお咎めなしなら、フジは「ほこ×たて」を復活させてもいいのでは、という声まで囁かれているとか。民放プロデューサーは言う。

「ちょうど『イッテQ』のウラで放送されているのが、『でんじろうのTHE実験』(フジ)という実験バラエティです。いくら米村でんじろう先生でもネタ切れになってきたのか、科学と実験の名のもとに“対決”企画が放送されるようになっています。これが“新旧滑らない靴摩擦対決”として、最新の作業靴とわらじを対決させるなど、明らかに『ほこ×たて』を彷彿させるような内容で、なかなか面白い。視聴率はまだまだのようですが。ならばいっそのこと、『イッテQ』のウラで『ほこ×たて』を復活させても問題ないんじゃないの?なんて言っているんですけどね」

 ヤラセの汚名を着せられたままの「ほこ×たて」ではあるが、斬新な企画であったために、ギャラクシー賞第48回奨励賞やATP賞テレビグランプリ2011 情報バラエティ部門最優秀賞、日本民間放送連盟賞テレビエンターテインメント部門最優秀賞などにも輝いた。番組打ち切りと入れ替わるように始まった、よく似た番組「超絶 凄ワザ!」(NHK)は昨年、終了している。ひょっとするとチャンスかもよ、フジテレビ。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月14日掲載

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