春ドラマ採点 最も残念だったのは「二階堂ふみ」 デーブの提言は予言になるか

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「ストロベリーナイト」を台無しにしたフジ

 大手プロ主導のドラマにも傑作良作があることは、何度も言ってきているので繰り返しません。本田なり松坂なり山本なり福山なり亀梨なり、ココんとこドラマや映画やプライベートで失敗続きのタレントを、「どげんかせんといかん」という事務所の事情もわからぬでもなし。ただ今期は、そういう芸能プロの言い分を聞いてやる制作側の知恵のなさすぎっぷりが際立ったなぁ。

 各作品のジャンルを眺めてみても、「サーガ」が刑事モノ、「左遷!!」が銀行モノ、「ラジハ」が医療モノと目新しさは激薄だし、「パーフェクト~」も事故で車椅子生活を余儀なくされてるイケメンを軸にしたラヴ・ストーリィで既視感まみれ。芝居が下手で数字も持ってないタレントをメインの食材に持ってくるなら、せめて調理法や器くらいは凝ろうよ。

 それでも、ワースト4作に敢えて順位=評価の差を付けたのは、たとえば「ラジハ」の場合、医療フィクションでは珍しい放射線科を舞台に選んだこと、主演の窪田が悪くなかったこと、演出や画づくりが「腐っても月9」という水準にあったことは買えたたから。窪田と本田の事務所臭い抱き合わせ商法さえなければ、むしろベストの方の候補になったかもしれない。

 一方、「左遷!!」は脚本が酷くて、同じ経済系ドラマという枠内だけで比較しても、4月期の全話平均で視聴率が最低だった「スパイラル」の方が、設定でも筋立てでも、はるかに納得感が高かったというレベル。数字が伸びなくて途中から立て直しのために話の流れが露骨に変わったときなんて、同情するつもりのない福山が可哀想に思えて見てられなかったです。

 さて、残る2本、つまり同率2位の「パーフェクト~」とワースト1位の「サーガ」については、もう詳しくは語りません。「パーフェクト~」の関西テレビ制作枠特有のユルさには今回も呆れたけれど、車椅子の上で鬱屈してる桃李くんの芝居は悪くなかったので、ワースト同率トップには落としませんでした。と、日記には書いておこう。

 で、単独でのビリに輝いた「サーガ」について言いたいことがあるとすれば、一応ヒットしたコンテンツである「ストロベリーナイト」という自社の資産の価値を、安易安直安手な焼き直しで見事に毀損したのに、先月末に開催の株主総会で特に吊し上げられることもなかったフジテレビの経営陣は幸運すぎるということくらい。

「全てのテレビ局が全てのドラマを止めた方がいい」。「2年間の休憩してリセットする事を勝手ながら勧める」。デーブの提言は、これまでの2年、ギョーカイに顧みられることはなかったけれど、これからの2年では、提言じゃなく予言になるかもしれません。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月9日掲載

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