経産省エリート官僚の出世レース脱落を招いた「ワンクリック」

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 今年も、はや水無月を終える。いよいよ本格的な夏を迎えるが、ここ東京のど真ん中・霞が関では毎年、一足早く「盛夏」が到来する。7月は人事の季節――。それを前に、痛恨のミスで出世レースから脱落した、経産省エリート官僚がいた。

 城山三郎の代表作『官僚たちの夏』は、「人事の風越」と呼ばれる通産官僚が主人公だ。独自の「人事カード」を持ち歩き、日がな組織構想を練る――。世は昭和から令和へと移り、そんな異色の役人は姿を消したことだろうが、彼らにとって己の立身出世が重大な関心事であるのは変わらず。今年も国会閉会後の恒例の人事発表に向け、さまざまな“情報”と“観測”が飛び交っているのである。

「中でも話題なのは、うちの現役キャリア課長が失速したことです」

 と述べるのは、さる経産省関係者。

「“彼”は一昨年、公正取引委員会に出向し、企業取引課長の要職に就いていました。7月の人事で戻り、然るべきポストに就くはずだったのですが……」

“事件”が起こったのは、それを目前にした6月中旬のことである。

「ある全国紙の記者に、部外秘の資料を渡していたのがバレてしまったんです。彼の部署は企業の取引における不正についての情報が集まる。その中に、ある世界的IT企業が下請イジメを行っているとの情報があり、世論を喚起しようとそれを知人の記者に流したんです」(同)

 これだけならよくある話だが、問題はその“やり方”だった。

「省内のメールアドレスから送ってしまったんです。これまでも彼には情報漏洩の疑いがあり、マークされていた節がある。そんな中、確実に足が付くことをやってしまった。記事になる以前の問題です。うちでのポストの話も白紙になり、本人や他の幹部にまで聞きとりが行われる事態に。まもなく何らかの処分が発表されると見られています」(同)

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