毎日新聞「報道の暴力」に対する厳重抗議

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 時事問題ウェブサイト『アゴラ』に掲載されている記事「毎日新聞vs. 原英史氏 フェイクはどちらか」(6月13日)、「毎日新聞vs. 原英史氏 フェイクはどちらか②毎日新聞に誠はあるのか」(15日)では、今回の一連の『毎日新聞』の報道について、客観的な分析がなされている。そのうえで、毎日新聞のやっていることは「報道の暴力」だと指摘されている。本当にそのとおりだと思う(ちなみに、これら記事を執筆している田村和広氏は、私と面識なく、何ら「協力関係」にない)。

目的を偽って取材

 私が「報道の暴力」を受けるのは、まあ仕方がない。国家戦略特区ワーキンググループ(WG)や規制改革推進会議で規制改革に関わり、その中で、他人の恨みを買うこともあったのだろう。それに、私は、多少の「暴力」を受けても反撃できる。

 しかし、私が絶対に許せないのは、私以外の、何ら「暴力」を受けるいわれなく、反撃することもできない人たちにまで、「暴力」の矛先が向けられていることだ。

 11日以来の毎日新聞記事では、私から「指南」を受けた、「協力関係」にある、などと指摘される関係者が何人か登場する。

 記事が出る以前の段階で、彼らが取材を受けていることは知っていたが、私から連絡はとっていなかった。記者から私に、「〇〇さんから、『一緒に会食した』と聞いていますが、事実ですね」などの質問を受けていたので、間違っても、口裏合わせをしようとしているかのような誤解を受けたくなかったからだ。

 記事が出てしまったのち、迷惑がかかってしまったことへのお詫びをするために連絡をとった。

 わかったのは、毎日新聞記者の取材のあまりの酷さだ。

 目的を偽って取材する。自宅や実家まで訪ねて入り込む。誘導尋問をしたり、求める答えをいうまで執拗に質問を繰り返す。取材対象者の答えを都合よく切り取って、全く意図と異なる回答をしたかのようにでっちあげる、などなどだ。

 以下では、取材対象者のコメントのうち、本人から公開の許諾を得たものをいくつか紹介する。このほかにも、同様の事例を何件も聞いている。順次公開していく。
 なお、またおかしな指摘を受けないように言っておくが、以下でコメントを公開するのは、彼らと私の「協力関係」を何ら意味しない。毎日新聞記者が彼らに悪質な取材をし、それに対するコメントを私が伺った。放置するわけにいかないと考えたので、了解を得た範囲で公開するものだ。

元・特区ビジネスコンサルティング社社長のケース

■毎日新聞記者の取材は執拗だった。自宅に朝なんども来られた。

■5月下旬になって、突然実家を訪問し、私有地(自宅横の車庫)まで入ってきた。ちょうど高齢の両親と一緒に出掛けるところだったが、両親を立たせたままで、自分から話を聞こうとした。あり得ない人たちだと思った。直接関係あるとはいえないが、母親は生活のリズムを崩し、翌日転んで骨折してしまった。

■その後、1時間から1時間半程度、車に乗せられて質問を受けた。何度も同じことを執拗に聞かれ、秘密警察の取り調べのようだと感じた。

■原さんに金銭を渡していると決めつけられ、質問を受けて何度「ない」といっても、執拗に回答を求められた。

■食事に関しても、ふぐを一緒に食べたはずなどの前提で、言質をとろうと質問された。やりとりの中で「自分と学校法人副理事長はいつも一緒に酒を飲んでいる」と答えたら、記事に掲載された一問一答では「原さんが説明に来た時は飲みに行っていないはずがない」と、全く意味の違う回答(筆者注:ふつうに読めば「原が飲みに行った」としかみえない)をしたことにされ、びっくりした。やりとりをテープにとっているのかもしれないが、切り取って全く違う意味にしている。2015年2月に原さんと食事をしたかは、もう何年も前のことでよく覚えていない。一緒だとしても、帰りの予定があってすぐに出たはずだと思うので、記者にもそう答えた。

■こんな取材をされて記事を書かれるのは、自分からみれば営業妨害。人間関係をめちゃくちゃにされ、現在の会社での取引先も失いかねない。許せない。

元・学校法人関係者のケース

■今回の記事をみて、とても怒っている。

■毎日新聞記者は、3回か4回、取材にきた。毎回、菓子折り、果物、扇子など手土産をもってきた。こんな取材は初めてだったので、驚いた。

■何を知りたいのか聞いたら、「原さんの功績を記事にしたい」とのことだった。人をおとしめるような取材ならいやだといったのだが、記事をみたら結局そういう記事だった。

■特区ビズ社との契約金額も事実と違うし、ほかにも事実と違う点が多い。また、取材で答えたことがすべて違う意味でとらえられて、記事になっている。食事については「ビールぐらい飲んだでしょう」といわれ、自分は飲んだが、原さんは先に帰ったことを答えた。記事では全く違う話になった。こんな取材はどうなのかと思う。

■別の新聞からも取材がきているが、答えたことと全く違う記事になることがわかったので、今後はもう一切受けない。

「取材の暴力」

 まだ現時点で公開できないが、ほかにも同じような話をいくつも聞いている。

 取材対象者に嘘をつき、生活の平穏を脅かし、業務を妨害し、重大な不利益をもたらしている。

 もちろん、報道の機能を果たすために、取材は不可欠で、尊重されるべきだ。しかし、情報をとるためなら何をやってもよいわけではない。一般人の平穏な生活や業務を無際限に妨害してよいわけでもない。

 今回の取材は、まさに「報道の暴力」あるいは「取材の暴力」と言ってよいレベルだと思う。しかも、そうした「暴力」を受けたのは、単に特区提案をしたというだけの一般人だ。

 そして、それでも取材の結果、真実を見出して読者に伝えたのであれば、まだ許せる。今回「取材の暴力」の結果できあがったのは、取材対象者の言っていないことをあたかも言ったかのごとく記し、思い込みで事実を歪曲した「ねつ造」記事だ。例えば会食に関する取材対象者とのやりとりを聞いただけで、今回の一連の記事に何の信ぴょう性もないことは明らかだ。

 こんな悪質極まりない取材を、私は決して許せない。毎日新聞社と記者に対し、厳重抗議するとともに、直ちに法的措置を準備する。

 毎日新聞社以外のマスコミ各社の方々、また、報道を受けて実態解明に取り組んでいらっしゃる国会議員の方々には、お願いをさせていただきたい。毎日新聞の不法な取材により単なる提案者に生じている被害を、さらに拡大させないようご配慮をお願いできないかと思う。

 特区WGを非公開にしたことが問題とされている。しかし、この件の事実関係は、15日公表の「反論文4」、その中にある八田達夫・特区WG座長の回答に書いたことがすべてだ。提案者を守ろうとした目的が果たせなくなるような形での取材や追及は、抑えていただけないかと思う。

 もちろん、会議の公開に関して、私たちや内閣府の説明が不十分と考えられるなら、その点での追及はあって然るべきだし、さらに説明する。また、特区制度や諸分野の規制改革に対する批判は、大いになされるべきだ。そうした批判を受け、もっと政策をよくしていかないといけない。

 だが、勇気をもって情報提供をしてくれた人を守ることは、そうした議論と別次元だ。ご理解いただけることを切に願う。

原英史
1966(昭和41)年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、大阪府・市特別顧問などを務める。著書に『岩盤規制―誰が成長を阻むのか―』、『官僚のレトリック』など。

Foresight 2019年6月17日掲載

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