米国が北朝鮮を先制攻撃するなら核を使うか? その時、韓国は? 読者の疑問に答える

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2019年6月12日掲載

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他人の憤りに無神経な韓国人

――韓国は大騒ぎでしょうね。

鈴置:それが、不思議なほどに平静なのです。保守系紙の朝鮮日報が「韓米連合司令部が平沢に、米軍の仕掛け線は南下」(6月4日、韓国語版)で「有事の際、米国は陸上部隊を含む本気の支援をしてくれないだろう」とは書きました。

 東亜日報も社説「韓米連合司令部が平沢米軍基地に移転、有事の防衛体制に支障はないのか」(6月4日、日本語版)で「北朝鮮から攻撃を受けた際の米韓協力体制」を懸念しました。

 でも、両紙とも「攻撃を受けた際」の心配です。在韓米軍の撤収やその後の米国による対北先制攻撃の可能性に言及する記事は、私が見た限りですが皆無でした。

 米国に見捨てられることはないと信じたい。心のどこかではそれを恐れているけれど、口には出したくない――そんな心境なのでしょう。

 その証拠に「米韓同盟の黄昏」を指摘した駐韓米国大使の発言や米議会調査局のレポートを報じたのは、ほんの一部の保守系メディアだけ。

 「在韓米軍撤収を巡る動き」を見れば「黄昏」は明らかなのですが。その結果、裏切り者に対する米国人の怒りに韓国人は気付かないのです。

 日本人の韓国に対する憤りに気付かなかったのと同じです。韓国のメディアは不都合な真実は無視してしまう。

 「韓国に対する反感」に触れる記事もありますが「ネトウヨなどほんの一部の日本人の問題」と書く。熱心に紹介するのは「日本は反省が足りない」が持論の朝日新聞の記事や、鳩山由紀夫・元首相、河野洋平・元衆議院議長の発言ばかり。

別居したが黙っている

――日本で「在韓米軍撤収」が報じられないのはなぜでしょうか。

鈴置:日本の韓国報道は基本的に韓国メディアの「写し」だからです。韓国の新聞が書かないと日本の新聞も書かない。朴槿恵(パク・クネ)政権が「離米従中」に動いた時もそうでした。

 事実を見れば、韓国が中国の言いなりの国になったのは明白だったのですが、日本のメディアは長い間、報じなかったのです(「米韓同盟消滅」第4章第3節「専門家だから『本当のこと』は言わない」参照)。

 もう1つ理由を挙げれば、「在韓米軍撤収への号砲」は米韓両国政府ともに、表に出したくはない真実だからです。

 前回の「在韓米軍撤収、先制攻撃はいつ? 読者の質問に答える」でも指摘したように、韓国では親米保守派が怒り出しますから文在寅政権はそっとしておきたい。トランプ政権も米軍撤収や同盟廃棄を外交カードとして活用したいので今、大声でこと挙げされたくない。

 離婚を念頭に別居した夫婦が、周囲には言いそびれているのと何やら似ています。隣家の人も離婚寸前とはなかなか気が付かない。

 さすがに安倍晋三首相は分かっていて「日米韓の防衛協力」とか「未来志向」とは言わなくなりました。でも、「韓国との防衛協力をしっかりやっていく」「韓国と未来志向の関係を作る」と言い続ける勘の鈍い大臣がまだ、いたりするわけです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

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